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第三十四話 殿下のやさしさ

殿下はわたしの話をじっと聞いていた。


「わたしの話は以上です。わたしはもう子爵家の人間ではないので、貴族ではありません、殿下にお仕えすること自体は大変光栄だと思っています。しかし、現状では困難だと思っています」


わたしがそう言うと、殿下は、


「これほどまでに苦労されていたとは……」


と言って涙を流し始めた。


「殿下……」


殿下がわたしの為に泣いていらっしゃる。


わたしは胸が熱くなってきた。


しばらく涙を流した後、殿下は涙を拭き、


「婚約破棄されて、追放されてしまった。そして、働く為、一人で王都を目指している。でも、決してあなたはへこたれない。前を向いて生きている。なんて強い人なんだ。わたしはあなたを尊敬します」


と言った。


その言葉はうれしい。


でも持ち上げすぎな気もする。


「わたしなんて、たいしたものではありません」


「いや、充分すごいと思っています。わたしは、そのお力をお借りしたい。一緒にこの王国を豊かにしていきましょう」


「今は貴族でないわたしですが、それでもよろしいのでしょうか?」


「そこは気にしなくてもいいです。王国に必要なのは、有能な人材です。わたしは、身分がどうであろうと、有能であるかないかがまず大切だと思います。そして、人間性も大切です。あなたはどちらも備えていると思っています。それでお願いをしているのです。それに、今すぐは無理ですが、いずれあなたには貴族になっていただくつもりです。功績を上げていけば、誰もそのことに文句を言う人はいないでしょう」


そこまでわたしのことを思っていて下さっている。


貴族の地位に、また戻りたいとはあまり思わない。


窮屈なところが多いからだ。


しかし、その心配りには感謝したい。


殿下の為に働くということ。それはとても魅力的なことだ。


殿下のお役にどこまで立てるだろうか……。


そういう心配はある。


でも一生懸命努力していけば、きっと殿下のお役に立てるに違いない。


「こんなわたしでよろしければ。殿下の為に尽くそうと思います」


と言った。


殿下は満面の笑みになり、


「ありがとう。受けてくれて。これほどうれしいことはない」


と言ってわたしの手を握った。


殿下の手。


熱い心とやさしさが伝わってくる。


わたしは、心が沸騰していく。


このままずっと殿下の手を握っていたい。


そう思っていたのだけど……。


殿下は手を離してしまった。


ああ、もう少しだけ握っていたかった。残念。


「これで王国は活性化します。ありがとうございます」


「殿下の為、一生懸命努力していきます。よろしくお願いします」


わたしはそう言って頭を下げた。


「こちらこそよろしくお願いします」


殿下もそう言って頭を下げる。


まだ出会ってから数時間しか経っていないが、わたしの殿下に対する好意はますます増してきていた。


わたしは、殿下に恋をし始めていると思う。


優雅に紅茶を飲む殿下。


殿下の方はわたしのことをどう思っているのだろう。


わたしの能力は評価していただいているようだし、好意もいただいていると思う。


でも恋というところまでは、まだ遠そうだ。


もっと仲良くなっていきたい。


今はほとんど無理そうなことだけど、恋人どうしになれたらいいなあ……。


わたしはそう思うのだった。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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