第二十七話 村を目指すわたしたち
わたしたちは、村を目指す。
殿下は、わたしに配慮してくれていて、速度は抑えめにしている。
もう日が暮れかけてきていて、次第に寒くなってきていた。
「疲れがますますたまっていると思います。お体の方は大丈夫ですか? 寒くないですか? 乗っていてつらくないですか? 休みたくなったら言ってください」
速度を緩め、殿下はわたしに聞いてくる。
「大丈夫です。お気づかいなく。このまま進んでください」
とは言ったものの、寒いと思うようになってきているし、疲れもたまってきている。
そうした状態で馬に乗るのは、決して楽なものではない。
しかし、殿下をこうして後ろから抱きしめていると、そうしたことは、そこまでつらいとは思わなくなっていた。
いや、それを乗り越え、幸せな気持ちになってきている。
そして、殿下に対する好意はどんどん増してきていた。
わたしは殿下に恋をしているのかもしれない。
それは自分でもよくわからない。
恋ではなかったとしても、わたしは殿下のことが好きだ。
わたしを生命の危機から救ってくれた、ハンサムで凛々しい殿下。
賊をあっという間に倒したその強さ。
素敵な人。
わたしはこのお方の為に尽くしたい。
なにかお世話できることがあればいいんだけど。
それには、王太子妃になるのが一番だと思う。
毎日殿下の為に、この身を捧げることができる。
しかし……。
わたしは、子爵家から追放された身。
王太子殿下とは身分が違いすぎる。
王太子妃になるということは、夢のまた夢。
村についたら、もうお別れだ。寂しいが仕方がない。
せめて、今だけは幸せな気分を味わっていたい。
わたしはそう思い、殿下の体に一生懸命しがみついていた。
夜になって少し経った後、わたしたちは村に着いた。
ここでお別れだ。
わたしはここで宿をこれから探さなければならない。
もっと殿下と一緒にいたかった。
でもそれは望めないことだ。
これからは、また一人で旅を続けなくてはいけない。
そう思っていたのだけど……。
宿屋と思われるところの前に来た。
豪華ではないが、結構大きな建物だ。
「今日はここに泊まる予定ですね」
殿下がそう言うと、
「はい。そうです」
と側近が答える。
「お嬢様の部屋も追加でお願いしたい」
「もちろんです」
「よろしく頼む」
側近は、宿屋に入っていく。
「殿下、わたしの部屋を追加でお願いしたい、という話をされていたようですけど、どういうことでしょうか?」
わたしがそう言うと、
「あなたは生命の危機に合い、疲れ切っています。これから宿を探すのは大変でしょう。今日は、ここに泊まっていきなさい。それがいいと思います」
と殿下は微笑みながら言った。
予想もしていなかった申し出だ。
「そんな、殿下にご迷惑をかけてしまいます」
殿下の申し出を受けていいのだろうか……。
「そんなことはない。わたしは助けたいからそうしているのです。宿代もこちらで払いますからご安心ください」
「そんな、それこそ殿下の御迷惑になってしまいます」
「気にしなくていいですよ。とにかく、この宿でくつろいでください。そうしてもらえるとわたしもうれしい」
殿下はそう言って微笑む。
断るのも失礼だと思ったわたしは、
「では申し訳ありませんが、お世話になります」
と言って、殿下の申し出を受けることにした。
すると、側近が戻ってきた。
「手続きは終わりました」
側近がそう言うと、
「ありがとう」
と殿下は言った。
殿下は、
「これから宿屋に入ります。ここで馬を降りてもらいますが、一人で大丈夫ですか?」
と言ってわたしを気づかってくれる。
「大丈夫です」
わたしは、馬には今までそれなりに乗っているので、難なく地面に降りることができた。
それに続き、殿下も馬を降りた。
「後はよろしくお願いします」
「かしこまりました」
殿下は馬を側近の一人に預ける。
「それではまいりましょう」
殿下はわたしにやさしく言う。
「殿下、ありがとうございます」
わたしは殿下に頭を下げた。
そして、わたしたちは、宿屋の中に入って行った。
「面白い」
「続きが気になる。続きを読みたい」
と思っていただきましたら、
下にあります☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に思っていただいた気持ちで、もちろん大丈夫です。
ブックマークもいただけるとうれしいです。
よろしくお願いいたします。




