神聖国編 第19話 『即席の戦友』
〜一方、その頃ジーク〜
ーーダンッ!、タタタ、ズシャッ!
地面を蹴り、走り回り、攻撃を避けては剣を振る。
「ハア、ハア、ハア、ちっ、次から次へと…!」
もう30人くらいは殺しただろうか。だが、向かってくる敵の数は変わらない。
いくら斬っても、刺しても、不気味な戦士達がジークに向かって迫ってくる。
しかも厄介なのが剣を持って襲ってくる奴もいれば、遠距離から魔法を放ってくる奴もいる。剣を交わしたと思えば、魔法が飛んでくる。
(こりゃ、やべえかもな…)
ジークは普段、隠密行動が主流だ。元々、大人数相手の戦闘には向いていない。
ジークは走り続ける。だが突然、足の力が抜ける。限界が来たのだ。
「しまっ……!」
ジークは地面に膝をつく。敵はそんなジークに容赦なく襲いかかる。
数十人の戦士が剣を突き立て、魔法が頭上から降り注ぐ。
(ダメだ。これは…避けられないっ!)
ー「アイスソーンズ!」ー
ー「アイスウォール!」ー
氷の壁が頭上から降り注ぐ魔法を弾き、地面から氷の棘が高速で生成される。
氷の棘は戦士達を貫き、赤く濁った水滴が滴り落ちる。
「帝国人に手を貸すのは少々不服ですが…まあ、いいでしょう」
冷気を纏い、水色に輝く魔石がはめられた杖を持った女がジークの隣に立つ。
少し不快そうな顔をしつつも、魔法を展開し続けるその女こそメーリアであった。
「あんた、なんで…?」
「勘違いはしないでくださいよ。これはあくまでリアナ様のためですから」
「ふっ、そこはせめて俺のためと言って欲しかったんだが…」
「冗談が言えるなら早く立ってください。死にたいんですか?」
「それもそうだな。よしっ!」
ジークは立ち上がり、再び短剣を構える。
呼吸を整え、状況を確認する。残りはざっと60人と言ったところだ。
「ジーク様、私が上級魔法で敵を一掃します。詠唱の間、私を護衛できますか?」
「ハッ、それが死にかけの男に頼むことか?まあ、いいだろう。乗ってやるよ!」
「ええ、任せました」
ジークは再び走り出す。メーリアに敵を近づけさせないために。
「氷よ、その冷気は全てを飲み込み、青き結晶と化す……」
斬って、斬って、避けては斬って。
魔法がくれば何とか剣で相殺する。普段なら避けるはずの攻撃を全て受ける。
彼女の、メーリアの魔法を信じて。
「……全てを凍てつかせ、我が敵を穿て!ーージークさん!戻ってください!」
「待ってました!」
ジークはメーリアの背中に立つ。
メーリアは杖を地面に突き立て、膨大な量の魔力を流しこむ。
やがてその光は凍てつく冷気に変わり、爆ぜる。
ー「アブソリュート・ゼロ」ー
凄まじい轟音と共にメーリアの周りの全てが氷に呑まれる。
その青く輝く大きな氷の結晶は恐ろしくも美しい。
ジークとメーリアの周りは一瞬で静寂に包まれた。
「す、すげえな…お前…」
「まあ、あなたもなかなかですけどね」
「お前に褒められるとは…なんかむず痒いな…」
メーリアはそんなジークを見て、少し微笑むのだった。
こうして、100人ほどいた神聖国の戦士達は一瞬にして氷漬けになったのだった。




