王国編 第5話
今日の夕食は兎のシチューだ。暖かくて野菜の甘みもある。戦場の飯とはまるで違う。
今までベットで食べていたリアナも今ではテーブルでルイと一緒に食事ができるほど回復していた。
「うむ、やはりルイの作る飯はうまいな」
「そりゃよかった。作った甲斐があるよ」
「なあ、ルイ」
「なんだ?」
「明日、私も一緒に依頼を受けてもいいか?」
「え?でもそれじゃお前の正体が…」
「いや、流石に冒険者ギルドに行くとかではない。お前が引き受けた依頼を手伝いたいのだ」
「ああ、なるほど。でも何で急に?」
「流石にルイに何もかも頼みっぱなしだしな。それにこんなに長いこと療養していたんだ。剣が鈍る」
「じゃあ、ゴブリンの討伐でもするか…」
「ルイ、私を舐めているのか?これでも一つの隊を任されていた身だぞ」リアナは明らかに不服そうだ。
「まあ、病み上がりなんだから無理は禁物!」
「仕方ないか…」
ルイが食器を片付けている。奥の部屋には昨日までなかった新品のベットが置いてある。
リアナは先に部屋に行き、寝支度をする。そしてキッチンに戻りルイに言う。
「先に寝るぞ」
「ああ、おやすみリアナ」リアナはそっと寝台の隣にある蝋燭を消した。
ルイもベットに入る。昨日までリアナが寝ていたベットだ。ほのかに良い香りがする。
自分用に買えと言われた新しいベットはリアナにあげてしまった。古いほうを使わせるのも悪いと思ったからだ。
リアナは「なぜだ?」と言っていたが渋々了承してくれた。
明日はリアナと初めて一緒に依頼を受ける。楽しみだが少し心配だ。
「何も起きなきゃ良いけど…」久々のベットは心地いい。ルイは眠りに落ちた。
翌朝、ルイは先に家を出てゴブリン討伐の依頼書を持って帰ってきた。
するとリアナは剣を腰にさし、外出の準備をしていた。
その剣はリアナが自分の髪を切り、帝国兵を斬り、何度も血で染めてきた剣だ。
「あの鎧は着ないのか?」ルイは壁に立てかけてある鎧を指した。胸の辺りには王国の紋が刻まれている。
「言ったでしょう?私はもう騎士ではなく剣士だと」
「…そうだな」
「それに相手はただのゴブリンだ心配することはない」
「じゃあ、行くか」
ルイとリアナは霧の森を出て王国に少し近い森に来ていた。
久々に感じる風がリアナの頬を撫でる。あの傷は跡も残らず治っている。
「リアナ、この先だよ。先に俺が仕掛けてもいいか?」
「ああ、構わないぞ」
ルイは剣を抜く。森を少し歩くと洞窟の手前にゴブリンの群れが見えた。4体いる。
ルイは走り出した。死角から仕掛ける。
「おらっ!」
ルイはすぐに4体のゴブリンを討伐した。
「ふう…こんなとこかな」
「…」リアナはルイをじっと見ている。
「なあ、ルイはもしかして元々片刃の剣を使ってたのか?」ルイは驚いた。図星だったからだ。
「何でわかったんだ?」
「いや、ゴブリンを切る時、ずっと同じ方向の刃で切っていたからな。何で今は両刃剣なんだ?」
「まあ、なんていうか…前のが折れちゃってさ。試しに買ってみただけさ」
「ふーん」
「ほら、次はリアナの番だぞ!」
「わかったわかった」
リアナは剣を抜く。今度は洞窟の中の掃討だ。数は6〜7体と言ったところだ。
「手伝おうか?」
「不要だ」
「ああ、そう…」
リアナは洞窟に向かって走り出した。
(私はこの国のため。民のためにこの剣を振うんだ!)
剣を構える。だがその時、リアナに疑問が浮かぶ…
(この国の…ため…?)
視界が真っ暗になる。息が荒くなり、鼓動が早くなる。そう。リアナは国から必要とされなくなった存在だ。
(あれ?私って…)
ー(何のために剣を振るんだっけ…?)ー
剣が震える。力が入らない。振れない…
リアナはその場で膝をついた。剣を落とす。そんなリアナにゴブリン達が襲いかかる。
「リアナ!」
ルイは走り出す。ゴブリンを次々に斬ってリアナのもとに駆け寄る。
朦朧とした目、荒い息、吹き出す汗。明らかに体調がおかしい。
ルイはリアナを抱えて走り出した。
霧の森に向かって…




