神聖国編 第17話 『創造物の戦い』
焦点の合わない青い目、白い髪、一際目立つ煌びやかな神官服。
誰よりも神を愛し、神に狂わされた狂信者が今、目の前にいる。
神聖国教皇オニキス・ヘルメシア。この男こそ創造物の片割れ、『神器』である。
「ああ、これは失礼。私の名前は…」
「ーーオニキス・ヘルメシア。いえ、神器と呼んだ方がいいかしら?」
リアナがオニキスの話を遮り、腰に下げられた純白の軍刀を抜き、構える。
ジークも即座に短剣を取り出し、姿勢を低くして構える。
「ああ!、名前を知ってくれているとは感激です!これも神の奇跡だ!」
「はっ! 何が神だ!一軍隊まで連れて。顔を見られたからにはやるしかねえな」
ジークは暗影の一人であるからこそ、敵に顔を晒した自分を悔いている。
すると丘の先から軍が降りてきた。おおよそ百人ほどの軍隊だ。
だがその軍隊の面々には不気味なほどに精気を全く感じられない。
まるで、ただ命令に従うだけの屍のようだ。
「さあ来いよ、死に損ないどもが!」
「行きなさい!神の使徒達よ!進む先には光が待っている!」
軍が一斉に迫ってくる。リアナとジークはそれを迎え撃つーーはずだった。
突如、リアナを強烈な衝撃が襲う。
ー「神力解放ー大地の息吹」ー
「なっ……!」
反応する間も無く、リアナは吹き飛ばされた。なんとか地面に転がり、立ち直す。
リアナとジークは瞬く間に切り離された。
「オニキス!あなた一体何をっ……!」
「君の相手はこの僕だよ…」
不敵に笑うその姿はなんとも気色が悪い。
そう、オニキスの狙いはリアナ、神臓だけなのだ。
ここに二人の神の創造物同士の戦いが始まったのだった。
リアナはオニキスに軍刀の刃先向ける。そして狙いを定め、魔力を込める。
ー「ライトニングジャベリン」ー
魔力が軍刀を伝い、光の閃光がオニキスめがけて放たれる。
(よし、ちゃんと杖としても使える!)
「甘いんだよ!」
ー「神力解放ー守護の壁」ー
リアナの魔法は金色の壁によって止められた。
だが、そんなことは想定済みだ。ただの魔法が簡単に通るとは思っていない。
(ぶっつけ本番だけど、やるしかない!)
ー「神力解放ー限界突破」ー
眩い光がリアナを包み込む。
目は金色に光り、体からは神力らしきオーラが立ち込めている。
「素晴らしい!素晴らしいですよこれは!」
「行くわよ!」
リアナは地面を蹴る。その衝撃は凄まじく、踏み込んだ場所がひび割れる程だ。
まさに生物の限界を超える能力。リアナはオニキスに軍刀を振るう。
ー「神力解放ー守護の壁」ー
「どうですかこの『守護の壁』は!どんな攻撃も防げーー」
《バキーン!》
「は…?」
今までどんな攻撃も防いでいた。金色の壁が呆気なく粉砕される。
オニキスの心拍数が上昇する。首元から一筋の汗が流れる。
「焦り」、それはこの男が生まれて初めて味わった感情だった。
リアナはそんなオニキスめがけて軍刀を振るう。だが、刃先が届きかけたその時だった。
「あがっ……!?」
リアナは急に体に激痛を覚え、その場に膝を付く。
自分の心臓の音が聞こえる。体からは汗が吹き出し、目の前がチカチカする。
(まずい、効果が切れた。まだ慣れないな…)
必死で体を起こそうとするが体が痺れて動かない。
そんなリアナにオニキスが近づく。
「いや〜。正直ビックリしましたよ。でも、君がまだ神力に慣れる前でよかった」
「あっ……あがっ…」
「必死なんだね。でも、もう終わりだ。君は僕と交わり新たな神になるんだよ」
「くっ……」
ジークは軍の殲滅で動けない。体も思うように動かない。まさに絶体絶命。
オニキスが倒れ込むリアナの首元に手を伸ばす。
(ああ、嫌だ。誰か…助けてっ……!)
ー「触るなよ」ー
ーーザシュッ
「……ーー?」
声が聞こえた瞬間、オニキスの右腕が地面に転がり落ちた。
オニキスは何が起こったのか理解できていない様子だ。
そしてリアナの目の前には銀色の髪に黒い軍服を着た男が立っていた。
リアナは目を見開く。その声は自分が一番聞きたかった声だっだ。
「……全く、今後は勝手な行動をしないでくださいよ」
また、別の声が聞こえた。それは女の声だった。
声の方向に視線を向ける。そこには冷気を纏ったメーリアが立っていた。
「……な…なんで…」
「分かってますよメーリアさん。ご同行感謝しています」
「……ルイ…!」
男はゆっくりと振り向く。その顔は自分が愛した男の顔だった。
「やあ、リアナ。助けにきたよ」
ルイは優しく微笑みかけるのだった。




