神聖国編 第14話 『神臓と神器』
エルフの森、その奥深くに位置する遺跡の中でリアナたちは温かな光に包まれていた。
「私の役割と神力…?」
そう不思議そうに呟くのはリアナだ。
「ああ、そうさ。まずは君の役割から話そうか」
ミカエルは落ち着いて話し始める。その顔はいつもどこか微笑んでいる。
「先ほども言ったけど、君の神臓としての役割は『動力源』だ。神器は神臓の神力を使うことで神聖魔法の行使を可能にしているからね。まあ、とりあえずこれを見てくれ」
ミカエルはそういうと懐から何かを取り出した。
「それは…何かの魔道具ですか?」
「ああ、そうだよ。これは月明かりの魔道具。月の光を閉じ込める魔道具だね。まあ、もう使い物にはならないが重要なのはそこじゃない。」
するとミカエルは急にその魔道具を分解し始めた。
「ちょ!ちょっとミカエルさん!貴重な魔道具を壊してしまってわ…」
「いいんだよ。言ったであろ?もう使い物にはならないと。それよりこれだ」
ミカエルは魔道具の中心に設置されている綺麗な石を指差した。
「これは…魔石…ですか?」
「ああ、つまり言いたいのは神臓と神器は二つで一つの魔道具みたいなものだということだよ」
「二つで一つ…ですか?」
「神臓は魔道具で言う動力源の“魔石”に当たる。一方で神器はその動力を魔法に変換する“装置”だ。二つが合わさることで初めてそれは完璧な形になる」
「完璧な形…それは一体…?」
ー「神さ」ー
「え…?」
「二つが一つになった時、それは新たな神となる。二つの創造物は交わり、二人の人間は一つになり、全く別の存在へと生まれ変わるのだよ」
リアナの背中を何かがゾクゾクと走る。冷や汗が止まらない。
「それはつまり…その…」
「ああ、それは人間で言う実質的な“死”を意味する」
“死”、そのあまりに無慈悲で冷酷な一言がリアナを襲う。
(死…?それが私の役割…?じゃあなんで私なんかが……。嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。まだルイに謝ってないのに、会って…ないのに…。死にたく…ない)
「ハアッ、ハアッ、ハアッーー」
リアナの息が荒くなっていく。目に映るのは絶望の色だ。
「リアナ!落ち着け!いいか、ゆっくり息を吸うんだ」
ジークが慌ててリアナの背中を摩る。リアナは少しずつ息を戻していった。
あれから少し経った。リアナの体調も回復してきている。
「すまない。急に怖いことを言ってしまったね」
ミカエルはとても申し訳なさそうな顔をしている。こんな顔を見るのは初めてだ。
「ただ、今は私たちのも予想外なことが起きているんだ」
「予想外のことだと?」
ジークはリアナの背中を支えながらミカエルに尋ねる。
「ああ、なんと神臓を持っていないはずの神器が神聖魔法の行使を行っているのだよ」
「はあ!? それはまたなんで…?」
「恐らくだが“信仰心”を糧としている。神の力の源は信仰心だからな」
「信仰心…神聖国か…!でもそんな膨大な信仰心をどうやって…?」
「これだけは考えたく無かったが、神聖魔法の『神の祝福』を行使した可能性が高い」
「なんだいそりゃ?」
「神器にしか扱えない高等神聖魔法の一つだよ。元は生物に僅かな神の祝福を与える魔法だったのだが…その神聖魔法には恐ろしい副作用があったのだよ」
「副作用?」
「ああ、普通の生物にとって神の祝福は僅かでも膨大な力だ。故に一度でもその祝福を体感してしまうと依存性が出てくるのだよ。そしていつかはその祝福を求める心が膨大な信仰心を生む」
「なるほど。なら、目星はつけていたがそんなことが可能なのは奴しかいねえ」
「ほう、神器に心当たりがあるのか?」
「おう。そいつの名はオニキス・ヘルメシア。神聖国の教皇だ」
〜その頃、神聖国宮殿内〜
ー「神力解放ー神の目」ー
「見えた!見えましたよ!彼女が!」
そう歓喜を上げ、天を仰いでいるのはオニキス・ヘルメシアだ。
「そう。そうなのね。あなたはそこにいるのね!」
オニキスは神の像の前で頭をつき、感激のあまりに涙を流す。
「待っていなさい。私の可愛い神臓…!」
宮殿内には彼の不気味な奇声がこだまするのであった。




