神聖国編 第11話 『エルフ』
長い長い森の細道を進んで行く。
暗かった森は次第に光を浴び始め、幻想的な空間を作り出す。
しばらく歩き続けると開けた場所に出た。
流れている川の水は底がくっきりと見えるほどに透明である。
「………」
リアナはその光景に心を奪われそうになった。
「そろそろ入ったかな?」
ジークは周りを確認しながら呟いた。
「入った?」
「ああ、ここがそのーーエルフの森だ!」
「………」
リアナは周りを見渡し、耳を澄ませる。だが、聞こえてくるのは鳥の囀りだけだ。
「ねえジーク、エルフの姿らしきものは見えないのだけど…?」
リアナは目を凝らして森を隅々まで観察している。
「まあ、奴らは警戒心が強いことでも有名だしね。待っていればすぐに……」
突然、ジークは話すのをやめた。目は周りを睨んでいる。
「……ジーク?どうしたの?」
「どうやら、歓迎はされてないみたいだね」
「え?それってどういう…」
「おい!出てこいよ!バレてるぞ!」
ジークは誰もいないはずの森に大声でそう言った。
もちろん、返事など返ってこない。リアナは意味がわからなかった。
「ねえジーク、何が起きてるの?私にも説明をーー」
「ーーほう、これを見抜くか人間よ」
突然、頭上から知らない声が聞こえた。リアナは反射的に軍刀に手をかける。
見上げると木の幹の上に誰かがいた。その影が地面に降り立つ。
リアナはその姿を見て目を見開いた。
白い長髪に色白の肌、尖った耳を持った見たこともない種族。
つまりこいつがーー
「性懲りも無くまた来たのかい?人間?」
ーーエルフ!
森に温かい風が吹く。目の前にいるのはエルフと呼ばれる種族だ。
ジークとそのエルフは互いに睨み合い、動かない。
「まただと?一体何のことだ?」
「お前たちも私たちエルフを攫いに来たのだろう?」
「そんなことしねえよ。俺はここのお偉いさんに用があってきたんだ」
「長老に?何故?」
「なに、話を聞きにきただけだ。危害を加えるつもりはないぜ」
二人はまた睨み合う。エルフの透き通った目は飲み込まれてしまいそうだ。
「まあいい、ちょっと待ってろ」
そう言うとエルフは去って行った。
「はあぁぁ…びっくりした〜」
リアナはそう言いながら地面に座り込んだ。
「何とか戦闘は免れたみたいだね。いやーよかったよかった」
ジークも安心に胸を撫で下ろしている。
「そういえばさっきのエルフ、攫うとか言ってませんでした?」
「ああ、確か昔人間がエルフの力を求めて何人か攫ったらしい」
「へえー、そんな歴史が。でもジークさんが守ってくれて助かりました」
「いや、正直危なかった。何せ相手が未知数な存在だ。下手したら終わる」
ジークの頬に一筋の汗が流れる。凄腕の彼でさえ緊張しているのだ。
ザッ、ザッ、ザッ…
あのエルフが去ってから少しした後、足音が聞こえてきた。
その足音はゆっくりと二人に近づいてくる。足音の方向に視線を向けると三人のエルフが視界に入った。一人はさっきのエルフだ。中央には背の高いエルフ、隣には子供のエルフがいる。
「やあ、待たせてすまないね…」
背の高いエルフが優しく微笑みながら話しかける。
「私がこの森に住まうエルフたちの長老をしている…」
ー「ミカエル・エルキメデスだ」ー




