表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣士様は女になりたい【完結済】  作者: ZIKIRU
第3章 神聖国編
PR
41/53

神聖国編 第9話 『幼き剣姫様』

〜今から12年前、神聖暦445年。トラニカル帝国〜


「こら〜!待ちなさい!三ちゃん!」

「やだよー!姉上〜!」

石造りの王城に子供二人の元気な声が響き渡る。

「つーかーまーえーた!」

銀色の髪をした少女がルイを背後から抱きしめる。

彼女はセリア・トラニカル。当時14歳、帝国唯一の王女である。

「ほら!剣の訓練だよ三ちゃん!」

「やだよ!姉上には勝てないもん!」

「そんなこと言ってるといつか大切な人ができた時、守れないわよ」

「そんな時、来ないよ〜」

「いいから!」

そうやって引きずられるように稽古に向かう。

それがルイとセリアの日常だった。



「おお!剣姫様!」

「剣姫様、おはようございます!」

城の者は顔を合わせるといつもセリアのことを“剣姫様”と呼ぶ。

どうやらセリアが初めて剣の稽古に参加した時、軍人の一人に勝ったらしい。それ以来、みんなはセリアのことを天性の剣才、『剣姫様』と呼んだ。

ルイはそんな姉が誇らしかった。

自分のことでもないのによく自慢してまわった。

セリアはよく護衛を連れて王国と帝国の境界近くにある綺麗なお花畑に連れて行ってくれた。毎回色んな花を集めてはルイにプレゼントしてくれた。

ルイはその場所が大好きだった。あの悲劇が起きるまでは……



雲行きが怪しくなってきたある日のことだった。

「ねえ、姉上!僕またお花畑行きたい!」

ルイはいつものようにセリアにお願いした。

「ごめんね、今日は護衛がいないの。だからごめんね…」

セリアは申し訳なさそうに断った。でもルイは今日行きたかったのだ。

なぜなら明日はセリアの誕生日でお花をプレゼントしたかったから。

「大丈夫だよ姉上!今まで敵にも出会ったこともないし。僕を『信用』して!」

「…わかったわ。いざとなったらお姉ちゃんが守ってあげる」

変わらない時間がいつまでも続く。明日も明後日も。そう本気で思っていた。

()()()()()()



(痛い。転んで足を怪我したのか?姉上が剣を抜いて何か喋ってる)

「ーーげて!」

(うまく聞き取れない。なんて言ってるんだ?)

「逃げて!三ちゃん!」

そう叫んだセリアの前には王国の鎧を着た騎士たちが数人いた。

一番奥には大剣を背負った大きな男がいる。


「いや!姉上も一緒に逃げるんーー」

「ーー“第三様”!逃げなさい!」


あんなに怒ったセリアをルイは見たことがなかった。

ルイは必死で走った。助けを求めるために。

だが、変わらない時間とは無慈悲にも呆気なく終わってしまうものだ。

ルイが父であるダグラスとその場に駆けつけた時に目にしたのは血で染まり、雨に濡れ、冷たくなった姉の姿だった。

何度呼びかけても、肩を叩いても、いつもの明るい声は返ってこなかった。

それどころか、肩に触れたルイの手は赤く染まっていた。

“剣姫様”なんて言われていたが、所詮は剣が上手な幼い女の子。束になった大人に勝てるはずがない。でも、セリアは立ち向かった。その無謀な戦いに。

その時、ルイは子供ながらにして悟ったのだ。『信用』なんて容易にしてはいけないと。その信用はいつか自分を、または自分の大切なものを奪っていくのだと。



そしてルイは大人になった。だが、彼の心にはずっと深い深い傷が残っていた。

そんな時、彼女と出会った。リアナ・アルベールだ。

そしてあの夜、リアナを城から助け出したあの夜、こんなことを言われた。


「私は、女としてあなたの側にいたい。でも、あなたの剣としても支えたいの…」


それを言われた瞬間、ルイは一つの言葉を思い出した。

なんだ、とってもピッタリな言葉があるじゃないかと。

そしてルイはリアナに言ったのだ。愛する彼女に向かって。その言葉は…



ー「剣姫様」ー


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ