神聖国編 第8話 『⬛︎⬛︎』
『エルフ』、それは遥か昔から存在しており、未だ謎多き種族である。
この時代で知られていることはエルフは皆、耳が尖り、老けず、長寿である事。
そして、古くから伝わる文献には興味深いことが書かれてある。
神の血が流れている種族。そしてこの世界で最も神に近しい種族であると。
リアナは帝国の郊外へ続く道を歩いていた。
しかし、一昨日隣にいた愛する人の姿はそこにはない。
そこには愛する人の面影を持つ男がいた。
「すいませんジークさん。わざわざ付いてきてもらって」
「いいんだよこれくらい。新しい剣ができたんだろ?」
普段外では面布をしているジークだが、今回は暗影の任務ではないので付けていない。
そのせいか風に揺れる銀色の髪が視界に入るたび、リアナの心が痛む。
「……すまんな。リアナ」
「え…?」
リアナはジークが突然謝ったことに驚いた。
「ルイの事だよ。兄として謝っておこうと思ってな」
「いえいえそんな!私も言い過ぎたと思ってますので!」
リアナも怒りたくて怒ったわけではないのだ。
ただ少しだけ、愛する人の隣に立てないかもしれないという恐怖に怯え、口が出てしまったのだ。リアナは今でもルイのことを心の底から愛している。そのことだけはずっと変わらない。
「あいつにもあいつなりの”悩み”ってものがあるんだよ」
「悩み…ですか…」
リアナは知らない。ルイの悩み事など。
きっと尋ねてもルイは話したりしないだろう。
できることなら知りたい。痛みや悩みは打ち明けてほしい。
自分だって愛する人を支えたいのだ。
そんな叶わないかもしれない願いをリアナは抱えるのだった。
しばらく歩いたところで鍛冶屋に着いた。
「ほれ、これがお前さんの剣じゃよ」
鍛治氏はリアナに布で巻かれた剣を手渡した。
リアナはその布を解く。中から現れたのは純白の鞘に金の彫刻が入った軍刀だった。刀身を見ると何やらキラキラしたものが見える。
「この刀身、何か混ぜてあるんですか?」
「よくわかったな。その刀身には砕いた魔石が混ぜてある。お前さんが魔法も使えると言っていたからな。一応、杖としても使えるぞ」
杖は魔法を使う時に魔力の消費量を調節してくれるものだ。
魔力量の少ないリアナにとって杖はとても嬉しい。
「それと…おや?この前のお連れさんはどうしたんじゃ?」
「………」
リアナは答えられなかった。顔が暗くなる。
「あーすまねえな。あいつ体調崩しちゃってよ〜」
ジークがなんとか誤魔化してくれた。
「そうか、それは残念だ。もう一つ依頼されていたものがあったんじゃが…」
「もう一つ…?」
リアナは軍刀しか頼んでいない。つまりそれはルイが頼んだものだ。
「ああ、気にせんでくれ!またお連れさんがきた時に渡しておくわい」
鍛治氏は少し焦った口調で話した。
「そう…ですか…」
リアナはそれが何か気になったが仕方なく諦めた。
そして鍛冶屋を後にした。
ここからは帝国を出てエルフの森へ向かう。
しばらくこの地とはお別れだ。リアナは寂しそうに道を歩いていた。
その時、ジークに声をかけられた。
「……なあ、歩きながらでいいから聞いてほしいんだ」
ジークは何か覚悟を決めたような顔をしている。
「分かりました…。なんでしょう?」
「ルイ、あいつの過去についてだよ…」
「ーー!」
「俺たち王族に女が居たことを知ってるか?」
「ええ、確かお姉様がいらっしゃるとルイから聞いていますが…」
「正確に言うと…いたんだ」
「え…?それはどういう……?」
「お前には話しておこうと思ってな。
マーク兄上と俺にとっての妹であり、ルイの⬛︎⬛︎に当たる…」
ー「セリア・トラニカルについて」ー
実はルイの”姉上”は帝国編 第2話『リアナ・アルベール』にて、単語だけですが一度登場しています。よかったら確認してみて下さい。




