神聖国編 第4話 『神の気まぐれ』
神とは実に気まぐれな存在だ。
自分で作った世界を何百年も放置したり、
急に興味を持ったと思ったらその世界に降り立ったり、
上位の存在であるからこそ誰にも縛られない。
いや、誰にも縛ることができないのだ。
神聖暦382年、今から約75年前、神はこの地に降り立った。
だが、神は世界に直接干渉することはなかった。
いったい何のために降り立ったのか、気まぐれな神の考えなど分かるはずもない。
そして神はこの世界に降り立つ際、自らの憑代を創造した。
その憑代は核にあたり、動力源、人間で言う”心臓”に当たる『神臓』、
そして、動かす体である神の器、『神器』の二つによって創られた。
神はこの世界を見て回った。見たかったものは何だったのか?それは誰も知る由もない。
そして神は帰る時、その憑代を神臓と神器の二つに分け、この世界に解き放った。
二つの神の創造物はこの世界を漂い、やがて二人の人間の一部となってこの世界に生をなした。
その二人の人間は奇跡なのか同じ時代に生まれた。
神臓 = リアナ・アルベール
神器 = オニキス・ヘルメシア
神の気まぐれによって生まれたこの二人は今、また一つになろうとしていた。
神の創造物の片割れによって…
〜神聖国王宮にて〜
「やっと!やっと見つけましたよ!神臓!」
オニキスは歓喜のあまりに頭を掻きむしり、興奮に駆られていた。
「あぁぁ…リアナ・アルベール…神の心臓…」
オニキスは魔法によって庭池の水面に映し出されたリアナを見て手を伸ばす。
「ああ、もうすぐ…もうすぐだ!これで私は…」
ー「神になれる」ー
〜トラニカル帝国王城内にて〜
ルイとリアナは地下牢を出て長い廊下を歩いていた。
「そういえば、リアナの剣って確か折れちゃったんだっけ?」
ルイは剣を下げていないリアナを見て言った。
「そうね…あの剣、結構気に入ってたんだけど…」
リアナはそう言いながら左腰に手を当て、そこには無い剣を見るように言った。
あの剣はリアナが騎士になってからずっと使い続けてきたものであり、
リアナが女を捨てた時に自分の髪を切った剣でもあった。
「じゃあ、作って貰おう!リアナにピッタリな剣を!」
「私の剣を?」
「ああ、ここの鍛治氏はその人に合った特注を作ってくれるんだ!リアナの気に入る剣も作ってくれると思うよ!」
「そうか…よし!なら行ってみよう!」
「そう来なくっちゃ!」
二人は笑顔で走り出す。軽やかな足音を響かせながら。
段々と迫る手に気づくこともなく…




