神聖国編 第2話 『狂信者』
ルイは目覚めてからずっと隣でリアナを見守っていた。
椅子に座って何時間も。体温を確かめるように手を握りながら。
窓から差し込む光が赤く色づき始めた頃だった。
握っていたリアナの手にわずかにだが力を感じた。
ルイは優しくその手を握り返す。するとリアナもその手を握り返した。
リアナの目がゆっくりと開かれる。そしてルイの顔を見た瞬間、リアナは微笑んだ。
「おはよう。リアナ…」
「ええ…おはよう。ルイ…」
石造りの病室に小さな二つの声だけが残るのだった。
リアナはゆっくりとベッドから身を起こし、ルイを見る。
包帯で隠されたルイの右目に手を当て、安堵と謝意の目をしていた。
「ごめんねルイ。私のせいでこんな…」
リアナはルイの右頬を撫でながら自責の念に駆られていた。
ルイはそっとその手を取り、自分の胸に押し当て、言った。
「いいんだよこんな傷。リアナが無事で本当に無事でよかったと思ってる…」
それは紛れもないルイの本心。そして彼女への愛だった。
二人は互いに見つめ合う。その距離が段々と近くなる。
お互いの唇が引き寄せられるように近づいていく。
リアナが目を閉じたその時ーー
「ーールイ!起きたんだな!よかったー!」
ジークがノックもなしに病室に入って来た。
「…ーーー!!」
「…ーーー!?」
ルイとリアナは素早く身を引いた。お互いに顔が真っ赤になり、動悸が激しい。
「何だ?リアナも起きてたのか。よかったなルイ!」
「う、うん…。そうだね…」
「何だ?息なんか切らして?顔も真っ赤じゃねえか。風邪でも引いたか?」
「いや、別に大丈夫!何でもないよ。何でも…!」
ルイは自分の顔の前で手をブンブン振っている。リアナは俯いていた。
「まあ、大丈夫ならいいんだが…」
ジークは状況がよく分からなかったが、続けることにした。
「地下に収容している元国王様と第二王子様との尋問だ」
「え?尋問なんてあるのか?」
「まあ、殺す前に色々聞き出したいからな」
「なるほど…?」
「お前らもついてくるか?」
ルイはリアナはの顔を見る。リアナは首を縦に振った。
「ああ、行くよ」
リアナはベッドから降り、まだ少しおぼつかない足取りで歩き始める。
ルイはそんなリアナの手を握り、支えながら共に歩いていくのだった。
“神聖国”、それはこの世界の暦である『神聖暦』の元となった国。
この世界で一番大きく、この世界で一番最初に生まれた国。
そしてこの世界で最大の宗教国家である。
〜神聖国王宮にて〜
「ああ!神の!神のお告げだ!」
白い髪に青い目、宝石が埋め込まれ、金の刺繍が施された白い神官服に身を包んだ男が膝を突き、歓喜の声をあげている。目の焦点は合わず、体は小刻みに震えている。まさに”狂信者”という言葉が相応しい。
彼の名前はオニキス・ヘルメシア。この神聖国の教皇である。




