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剣士様は女になりたい【完結済】  作者: ZIKIRU
第2章 帝国編
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帝国編 第19話 『師弟』


その男は大剣を構えている。鍛え抜かれたその逞しい体。

ゴツゴツした手からは積み重ねてきたであろう努力の多さが感じ取れる。

その男の名はボルフス・グレイン。

このセフィロース王国最強の騎士にして最大の敵。

そして(リアナ)の……



ーーーー師である男だ。



私が女を捨て騎士になり、戦いに参加するようになって二ヶ月が経ったころだった。

私はもちろん、今まで剣など握ったことも無かったので怪我をすることが多かった。

ある日、稽古をしていた時、その男が私の所に来た。


「最近戦果を挙げている新人がいると聞いて来てみれば、元女であったか」

「落胆いたしましたか?」

リアナは睨むような目でボルフスを見る。

「いや、鍛え甲斐がありそうだと思ってな」


それから毎回、ボルフスはリアナに稽古をつけてくれた。

剣の振り方、構え方、斬り方。リアナはその全てを己に叩き込んだ。

時には剣の稽古だけでなく、組み手や騎士としてのあり方など沢山のことを教えてもらった。

やがてリアナはボルフスを父のように慕った。

父を亡くしたリアナにとってボルフスは心の拠り所だったのだ。

そして何よりあの厳しいボルフスが褒めてくれる時が一番嬉しかった。

褒め言葉といってもたった一言の「見事だ」だけだったが

それが騎士になったリアナにとって最高の褒め言葉だったのだ。



そんな父のように慕った男が今、敵として目の前にいる。

リアナは知っている。ボルフスが規律に忠実な騎士であることを。

だからこそ身内であっても容赦はしない。

「残念だリアナよ。私は騎士とは何たるかを教えたつもりだったのだが…」

「ごめんなさいボルフス様。私はもう大切なものを見つけたので」

「そうか…」

ルイとリアナ、ボルフスは互いに剣を構える。

「リアナ、準備はいい?」

「ええ、いつでも!」

「いくぞ!」

二人は踏み込み、走り出す。二人が同時にボルフスに向かって剣を振り下ろす。

だが、その大剣で防がれる。二人の全力の力でもボルフスを動かすことはできない。

「だったら…」

ルイは全身に魔力を循環させる。それも最初から全力だ。


ー「身体強化(ステータスアップ)」ー

ー「速度上昇(スピードアップ)」ー


「オラーッ!!」

スピード、パワー、全てを強化したルイがボルフスに斬りかかる。

いろんな方向から力強い斬撃を浴びせるがボルフスは大剣を盾のように使い防いでいる。

何度も何度もルイは斬撃を浴びせ続ける。その度に剣と剣が擦れ合い赤い火花を散らしている。

「見事な剣筋だ帝国人よ。お主は魔力循環体質者だな?」

「よくお分かりでっ!」

「だが、少しスピードに頼りすぎているようだ。」

するとボルフスは急に盾にしていた大剣を構える。

「ふんっ!」

特大の斬撃。脳が、体が、避けなければ死ぬと言っている。

「ぬわっ!」

ルイは間一髪でその斬撃を避けた。

だがその時、ルイはボルフスから魔力を感じた。

(おいおい!まじか!?)

ルイは空中で無理やり体制を立て直す。

直後、ボルフスから魔力が溢れ出す。


ー「ウインドカッター!」ー


数枚の風の斬撃がルイを襲う。

「魔法も使えんのかよ!」

その斬撃は魔法とは思えないほど重い。

ルイは何とか耐えていたが最後の斬撃で軍刀が弾かれ手から抜けてしまった。

「クソが!」

ルイは軍刀を拾いに走る。

その間にボルフスの相手はリアナへと変わる。

リアナはボルフスにありったけの斬撃を浴びせる。

だが、受けるどころか全て避けられる。

当然だ。なぜならリアナに剣を教えたのはボルフス本人であるのだから。

「甘い!」

ボルフスが大剣を振り上げる。リアナは咄嗟に受けの姿勢を取る。

だが、ボルフスが大剣を振った瞬間、違和感に気づく。

まず、最初に聞こえたのは「バキンッ!」という何かが砕ける音。

目の前に飛び散る銀色の破片。そして何より剣が妙に軽い。

リアナは自分の剣を見る。その瞬間、顔が青ざめる。

そう、剣が砕かれたのだ。そして同時に武器を失ったのである。


ー「ライトニングジャベリン!」ー

ー「ライトニングジャベリン!」ー

ー「ライトニングジャベリン!」ー


リアナは必死に魔法で抵抗する。

だがその魔法はボルフスの風魔法で相殺された。


ー「ライトニングジャベ…ッ」ー


リアナの足元がフラつく。魔力枯渇だ。

リアナは元々魔力量が少ない。

(ああ…やばいな…視界が…歪んで…)

ボルフスが大剣を構える。その動きに躊躇など無い。

「リアナ!」

ルイは膝をつくリアナの元へ走る。

「許せ。愛弟子よ…」


ーーーズシャッ


ボルフスはそう言って大剣を振り下ろしたのだった。

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