帝国編 第18話 『最強の騎士』
ルイたちは離宮を出て王城へ向かっていた。
離宮と王城は離れて作られているが脱出用に地下通路で繋がっている。
この情報と戦闘のできる使用人たちはノールが準備してくれた。
薄暗い石造りの通路が続いている。
もちろん何年も使っていないので埃が舞ったり蜘蛛の巣が貼っていたりと
ひどい状態ではあるが使えるだけありがたいと思うことにした。
ルイは松明を片手に先頭を走っていた。
「後どれくらい?」
ルイはノールの使用人の一人に聞く。
「後少しで裏庭の物置に出ます。」
「了解!」
少しすると階段が見えてきた。
登るとそこは暗い倉庫だった。どうやら床下倉庫に繋がっていたらしい。
ルイは床下倉庫から這い上がり軍服についた埃をはらった。
ゆっくりと倉庫の扉を開ける。誰もいないようだ。
「よし。いくぞ」
ついに一同は王城に侵入したのだった。
王城へ侵入し長い廊下を走っている時だった。
外からわずかだが争う声が聞こえた。
窓の外を見ると城壁の向こうに無数の赤い光が見える。
「始まったか…」
そう。ついに帝国軍と王国軍の戦争が始まったのだ。
「急ごう…」
一同はまた走り出す。すると前から見張りの騎士が歩いてくるのが見えた。
(まずいな…どうする?)
そう考えているとルイの横をキラリと光る何かが素早く通り抜けた。
直後、前の見張りが倒れる。近づいてよく見ると首元に投剣が刺さっている。
「バレると厄介なんでね」
後ろを見ると袖口から投剣を取り出すジークの姿があった。
「相変わらずおっかねえな…」
ルイやリアナ、ノールの使用人もその事を改めて実感する。
だが、その時だった。
「侵入者だー!」という声が城内に響き渡る。
(どういうことだ!?なぜバレた?ーーまさか!?)
ジークは慌てて殺した見張りの騎士の首元を探る。
そこには緑色に輝く宝石のついたネックレスがかかっていた。
(生死の魔道具!クソッ!俺としたことが…)
生死の魔道具。それは着用者が死に至った時、それを感知して他の装着者に伝えるものだ。
まさかこんな高価なものを見張りの騎士にまで持たせていたとは予想外だった。
ルイたちの元に見張りの騎士が集まり出す。
あっという間に囲まれてしまった。騎士たちは剣を抜き出す。
すると暗影たちが即座に騎士の殲滅に取り掛かる。だが騎士の数は増すばかりだ…
ルイたちも応戦を開始しようとした時、ジークが敵を引き寄せる。
「ルイ!リアナ!先に行け!」
「でも、兄上!この数は無理があります!」
「ここは俺たち暗影と使用人たちが応戦する!何、自分の尻くらい自分で拭くさ!」
そう言いながらジークは次々に騎士たちを倒していく。
「行きましょうルイ!」
「クッ……兄上!死なないでくださいよ!」
そう言ってルイとリアナは戦闘を抜け、走り出した。
ついに目的の場所まで辿り着いた。王の部屋だ。
早くしなければジークたちが心配だ。
二人は勢いよく扉を開けた。しかし、そこには王の姿はなかった。
代わりにそこには一人の男がいた。リアナは目を見開く。
いつだろうその姿を最後に見たのは。正直、もう見たくもなかった…
「ーーようリアナ、随分と女々しくなったじゃないか…」
甘ったるい声、傲慢なその態度。見るだけで反吐が出る。
かつてこんな男を愛した自分を殴りたい気分だ。
「……そうですね。ーーレオン様…」
リアナはレオンを睨みつける。そこには明確な殺意を感じる。
「そんな怖い顔で見ないでくれよ。悲しくなるだろ?」
「随分と余裕ですわね。殺されるかもしれないのに」
「殺される?この僕が?笑わせないでくれよ…」
「私は今すぐにでもあなたを叩き斬りたい気分ですわ」
「おっと。戦う相手は僕じゃないよ。こいつだ…」
そう言うとレオンの隣から男が出てきた。
がっしりとした体、背中には大きな大剣を背負っている。
リアナの手が震える。それはかつてリアナを斬った男。その名は…
「君たちの相手は王国最強の騎士。ボルフス・グレインだ!」
ボルフスはゆっくりと背中の大剣を抜き、構える。
その気迫は人間というより上位のモンスターのようだ。
リアナの息が荒くなる。怖い…。逃げたい…。
「大丈夫。俺たちならやれる。勝つぞリアナ!」
そのルイの言葉にリアナは背中を押される。
「ーーうん!」
こうして“最強の騎士”と“最強の二人”の戦いが幕を開けた。




