帝国編 第16話 『策士』
マークからの作戦内容の書かれた書状が送られて来てから二日がたった夜、
ルイとリアナ、暗影たちは夜の暗い森の中を駆けていた。
アルベール領を出て王都カザリアに向けて進行中だ。
ダグラスとマーク率いる帝国軍はアルベール領を経由し王都カザリアの正面から戦争を始める。
その一方で少数精鋭のルイたちは王都のある場所へ向かっていた。
マークから提示された作戦はこうだ。
まず、帝国軍が王都カザリアの正面から戦い、敵兵をさく。
正直言って王都カザリアの正面突破はかなりきつい。
そこでルイたちの出番だ。
ルイたちは帝国軍が戦っている間に王都カザリアに侵入。
そこから王城を叩く…のがいいのだが、さすがに王城の正面突破も難しい。
ならばどうするか?そこで目をつけたのがあの場所だったのだ。
「見えたぞ!」
ルイたちは森を抜け、その場所にたどり着いた。
「ついたぜ…“離宮”!」
そう。マークが注目したのは“離宮”。
そこは王城と隣接しているとはいえかなり守りが薄い。
「確か離宮には五十名ほどいるんだったよな?」
ルイがジークに確認する。
「ああ、そうだ。先に俺たちが確認してくる。合図があったら来てくれ」
そう言って暗影たちは消えていった。だが、ここで予想外のことが起きる。
暗影たちが言ってからほとんど立っていないのにもう合図がきたのだ。
ルイとリアナはとりあえず言われた通りに向かってみることにした。
「どうしたんだ?かなり早いな?」
「それがどうもおかしいんだ…」
面布をしていて顔はわからないが声でジークだとわかった。
「見張りどころか使用人たちの姿がねえ。いや、正確にはいるんだが…」
「つまりどういうことだ?」
「全員が一ヶ所の部屋に固まってるんだ…」
どういう意味かわからなかった。なので一度入ってみることにした。
離宮の中はやけに静かだ。まるで誰もいないように。
ルイたちはその部屋の前まできた。扉の隙間から光が漏れている。
すると扉の奥から声が聞こえてきた。
「大丈夫だ。入ってきていいよ…」
か細く、今にも途切れそうな男の声。一同はその声に驚いた。
「……ちっ、完敗だ。俺たちの動きを完全に読んでいやがった」
ジークは指を咥え悔しそうにしている。
そして恐る恐る扉を開ける。そこにはまさに異常な景色が並んでいた。
男と隣にいるメイド。そして他の使用人たちが平然な顔で全員後ろに並んでいる。
「やあ、よくきたね。帝国の皆様方…」
その男は病気なのかメイドに支えられながら話し始める。
「私はノール…。ノール・セフィロースだ。この国の第一王子だよ」
第一王子。なぜこんな所に?そしてこの異常な光景はなんなのだ?
一同は困惑して身動きが取れなかった。そこでノールが口を開く。
「警戒するのはわかるさ。だが私たちは君たちの敵ではないよ」
「敵ではないだと?だったらなんだと言うんだい?」
ルイが軍刀に手をかけながら質問する。
「頼むから武器から手を離してくれないかい…?リアナ嬢からもお願いだよ」
どうやらノールはリアナを知っているようだ。
「リアナ、あいつを信じていいのか?」
「うーんどうだろ。でもノール様だしな〜」
「あいつなんかやばいのか?」
「やばいというかその…ノール様には二つ名があってだな…」
リアナは何か不気味なものでも見るような目でノールを見ている。
「どんな二つ名なんだ?」
「それが…」
ー「影の策士」ー




