帝国編 第14話 『終止符を』
〜トラニカル帝国王都オスタージュ王城にて〜
リアナたちが昨夜出発し、王城の窓からうっすらと太陽の光が差し込んできた頃だった。
王城に早馬が到着した。暗影の一人が書状を持ってきたのだ。
マークは夜遅くの軍議の疲れを背負いながらも椅子から腰を上げ歩き出した。
書状を見た瞬間、マークの口元が緩んだ。
「あの女、本当にやりおったわ」
書状
「帝国兵および王国人に死傷者無し。軽傷者1名。屋敷の占領を完遂」
たった一つの小さな領地でも手に入れるために軍を動かす。
それは長らく軍部総司令官をしていたマークにとって当たり前のことだった。
なぜならそれが戦争だから。争いだからだ。
だが今、その常識が覆されたのだ。たった一小隊、たかがそれだけで
この女は小さな領地どころか大貴族の領地をたった一夜にして占領したのだ。
「ふふ、ふふふっ、ふははははは!」
マークは不気味に笑い出す。
「本当に面白い!やはり戦略は奥が深いな!」
マークは興奮した様子で部下に伝える。
「今すぐ軍議を開け!このチャンスを逃すな!今、ここで…」
「この戦争に終止符を打つ!」
一人の女のたった“一言”から始まった戦略。だがその戦略が時代を大きく進めた。
まさに、歴史を変えるきっかけを作った“一言”だったのだ。
〜セフィロース帝国アルベール領の屋敷〜
昨日遅くまで話していたせいかみんな起きるのが遅かった。
ルイはカーテンの隙間から漏れ出る光で目を覚ました。
ベットから起きあがろうと寝返りをうった時、目の前に見覚えのある顔があった。
「ようルイ。よく眠れたか?」
それはジークだった。いつの間にかルイのベットの中に入っていたのだ。
「……ーーー!?」
ルイは考えるより先に手が動いた。ルイの拳がジークの顔面に直撃する。
「いいぃって〜〜!」
ジークは鼻のあたりを抑えながらベットから転がり落ちた。
「朝から驚かせんじゃねえ!びっくりしただろ!」
「だからって兄に顔面パンチはねえだろ〜!」
ジークは床でうずくまっている。ルイは気を落ち着かせて話し出す。
「で?兄上がいるってことは何か報告することがあるんじゃないですか?」
「そうそう。報告だよ報告」
ジークは床に座って話し出した。
「今日の早朝、王国から“お客様”がいらっしゃったぜ」
「“お客様”?」
「たぶんだが王国の隠密部隊だな」
「そいつらは今どこに?」
「俺たちがちゃんと地下の牢屋にご案内したぜ」
「流石というかなんというか…かわいそうだな…」
ルイは知っている隠密行動で暗影に勝るものはいない。
だからこそ敵の隠密部隊がかわいそうに思えてくる。
「じゃ、報告のためにもみんなを起こしますか」
ルイはベットから起き上がり着替えるのだった。
〜セフィロース王国離宮〜
「それでアリーシャ、“あれ”はもう準備できたのかい…?」
ゆっくりと朝食を食べながらノールはアリーシャに訪ねる。
「はい。離宮内の全ての使用人にも通達済みです」
「さすがアリーシャだね。ありが…ゴホッゴホッ…」
ノールは言いかけたところで咳が出てしまった。
「ノール様、あまり無茶はなさらないでくださいよ」
アリーシャは心配そうにノールを見ている。
「大丈夫さアリーシャ。今日は具合がいいんだ…」
ノールは席を立ち、ゆっくりとおぼつかない足取りで窓に向かう。
その窓からは王城が見える。朝と変わらず王城内は騒がしい。
「そろそろ始まるね…大きな争いが…」
ノールは何かを見透かすような目で王城を眺めるのだった。




