帝国編 第13話 『病の王子』
〜セフィロース王国王都カザリアの王城内〜
その白く輝き高くそびえ立つ城はこの国の富と権力の象徴だ。
そんな城の1日は優雅に始まるーーはずだった。
セフィロース王国国王、ゼノス・セフィロースは不快に満ちた表情で起床した。
廊下から聞こえるバタバタという走る音、役人たちが大きな声で言い争う音。
おかげでいつもの朝の優雅さはかけらもない。
「これは一体なんの騒ぎだ!騒々しいぞ!」
ゼノスは使用人を怒鳴りつけた。
「も、申し訳ございません陛下。ですが緊急事態でございますゆえお着替えになりましたら早急に会議室までお越しください」
“緊急事態”その言葉でことの重大さがわかってくる。
だが一体なんなのだ?昨日も夜まで戦や夜襲の報告はなかった。
ゼノスはすぐに着替えて会議室に向かった。
会議室に近づくにつれ言い争う声が大きくなっていく。
その声は爽やかな朝の空気を一瞬で消し去り響き渡る。頭が痛い。
会議室の扉を開けると数十人の貴族役人たちが言い争っていた。
奥には第二王子のレオン・セフィロースもいる。
「騒がしいぞ!朝から何事だ!」
「ああ、陛下!大変なことが起きたのです!ア、ア…」
「あ?」
「アルベール領が占領されました…」
その予想を遥かに超えた報告にゼノスは唖然とした。
アルベール領が占領された?なぜ?あそこは王国の中での内陸に位置するはず…
理解が追いつかない。あの広大で公爵家であるアルベール領が一夜のうちに占領されたのだ。
「父上、ここは私にお任せください」
レオンが自慢げに話し出す。
「何をするつもりだ?」
「私の部隊をいかせましょう。報告では敵は一小隊ほどらしいですから」
「ああ、お前の隠密部隊か、よし許可しよう」
「ありがとうございます父上」
(クックック。これで次の王座は私も同然だな悪く思うなよ兄上…)
〜離宮にて〜
離宮はいつも静かである。しかし離宮の朝は決して優雅と呼べるものではない。
そんな離宮の一室に彼はいた。
薄暗く窓にはいつもカーテンがかかっている。夜以外、蝋燭も滅多につけない。
「ノール様、ご起床されますか?」
一人のメイドが彼に訪ねる。彼の隣には必ず彼女がいる。
「そうだねアリーシャ。そろそろ起きようかな…」
彼は病弱で重い体をゆっくりと起こす。
「ねえアリーシャ、なんだか王城が騒がしそうだけど何かあったのかな…?」
彼はカーテンの隙間から王城の廊下をバタバタと走る役人たちを見ていた。
「わかりませんね。何せ離宮ですから情報が回るのが遅いのですよ」
「そうだよね…レオンは上手くやるかな…」
「レオン様の心配より自分の心配をしてくださいませノール様」
「わかってるよアリーシャ。さあ、朝食でも食べようかな…」
彼の名はノール・セフィロース。セフィロース王国の第一王子である。




