帝国編 第10話 『死闘』
アルベール領の屋敷の一角でその戦いは静かに幕を開けた。
重い冷気が体を包み、呼吸をするたびに息が白く濁る。
目の前にいるのは”アイシクルランス”を展開したメーリアだ。
(まずいな…できれば戦いたくないんだけど…)
ルイは少しずつ間合いをとる。ゆっくりとゆっくりと…
その時、メーリアが仕掛けた。
ー「アイシクルランス」ー
氷柱の槍がルイに向かって飛んでくる。ルイは交わした。
「おらっ!」
ルイはその隙を見逃さずメーリアに迫る。メーリアも即座に魔法を展開する。
ー「アイスウォール」ー
『ガキン!』という音が室内に響き渡る。ルイの軍刀は巨大な氷の壁に止められた。
ルイは一旦距離をとる。そこにメーリアが間髪入れずに魔法を叩き込む。
ー「アイシクルランス」ー
ー「アイシクルランス」ー
ー「アイシクルランス」ー
ー「アイシクルランス」ー
メーリアの魔法の生成速度は凄まじい。ルイはなんとか避けている。
このままではジリ貧だと判断したメーリアは奥の手を出す。
ー「アイシクルランス…×3」ー
メーリアの周りに氷柱の槍が同時に三本生成される。
(バカな⁉︎ 並列構築だと⁉︎)
“並列構築”それは一回に複数回の魔法を同時に扱う芸当。
簡単に言うがこれは脳にかなりの負担がかかる。
そして今メーリアが使ったのは“×3”かなりの負荷がかかっているはずだ。
先ほどの攻撃の3倍の量で氷柱の槍がルイめがけて降りかかる。
ルイは腕や脚などに擦り傷を負った。いくらルイでも完全には避けられない。
するとメーリア鼻から一筋の血が流れるのが見えた。
「お前!それ以上使うと脳が焼き切れるぞ!」
ルイがメーリアに警告する。
「それでお前を殺せるなら本望だ!」
ー「アイシクルランス×3」ー
ー「アイシクルランス×3」ー
ー「アイシクルランス×3」ー
メーリアは攻撃を止める様子がない。
「仕方ねえ…」
ルイは全身に魔力を循環させる。
ー「身体強化」ー
ルイは強化した身体能力で降り注ぐ氷柱の槍を交わす。
そしてメーリアの懐に入り込む。
(もらった!)
ルイは軍刀を振るった。
だが、刃先がメーリアの首元まで来たところで手が止まった。
リアナの言葉を思い出したからだ。これは“守るための戦い”であると。
メーリアはその隙にルイから距離を置く。
「なぜ、殺さなかったのです?」
「まあ、愛する人からの願いなのでね」
「私をバカにしているのですか?」
「そんなことないさ。で、話し合いをする気は?」
「ありませんね」
「そうかよ」
二人はまた戦闘体制に入る。
メーリアの顔から明らかに疲れているのがわかる。
(このまま戦闘不能になるまで持ち堪えるか?
いや、それではこいつが持たない…どうすれば…)
ー「アイシクルラ……ッ」ー
二人が再び力をぶつけ合おうとした、その刹那――
ー「ライトニングジャベリン」ー
『ズドーン』という音と共にメーリアの生成した氷が砕かれた。
メーリアが魔法を使う前に誰かが別の魔法を使ったのだ。
もちろんルイは魔力循環体質者なので違う。では一体誰なのか?
二人は魔法の放たれた方向を見る。
そこには金色の髪に白い軍服を着た“剣姫”の姿があったのだった。




