帝国編 第9話 『因縁の相手』[挿絵あり]
セフィロース王国アルベール領。
雨が少なく、乾燥したこの土地はブドウの栽培にとても適している。
そんな豊かな土地の静かな夜にひっそりと迫る影があった。
ー3日前ー
「ところで具体的な作戦はどうするのだ?」
マークはリアナに質問する。リアナは冷静に話し始めた。
「まず、この作戦で最も重要な役割を持つのは私とルイです」
「俺もなのか⁉︎」
「ええ、そうよ。ところでマーク様、軍を少々貸していただけませんか?」
「いいだろう。どれくらい欲しい?」
「一小隊[30〜40人]ほどで構いません」
「たった一小隊だけで良いのか?」
「はい。先程も言ったようにこの作戦の要は私たち二人です」
「では、小隊は何に使うのだ?」
「屋敷を占領した時に見張りとして使うのです」
「なるほど…」
マークはあまり納得していないようだ。
「この作戦、必ず成功させて見せます」
・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
そして、今に至る。
二人は屋敷の前まで来ていた。
マークが貸してくれた特別精鋭特殊部隊“暗影”は近くの森に待機している。
「じゃ、作戦開始よ」
「了解。でも暗くてよく見えないな…」
「仕方ないわね」
リアナは手に魔力を込める。
ー「ライトニング」ー
リアナの手から小さな光の玉が生成され周りをほんのり照らした。
「リアナって魔法使えたんだな」
「まあね、光魔法だけだけど」
「魔術師にはならなかったのか?」
「私はそこまで魔力がないのよ。だから剣士の方があってるわ」
「ふーん。それじゃ、始めるとしますか。俺は右に行くからリアナは左をお願いな」
「任せて」
二人はゆっくりと窓から侵入し、左右に分かれて走り出した。
ルイは少し走っていると光が漏れている部屋を見つけた。
ルイはその部屋の扉をゆっくりと開けた。その時、中から誰かの声がした。
「何者ですか⁉︎」
メイド服を着た女が一人いた。でも、どこかで見た顔だ。
それは侍女長のメーリアだった。
メーリアはルイたちの僅かな気配を感じ取り目を覚ました。
侍女長であるメーリアは元は王国の魔術師だったのでかなり腕が立つ。
部屋の扉がゆっくりと開く。
「何者ですか⁉︎」
メーリアが警告すると一人の男が入ってきた。帝国の軍服を着ていた。
メーリアは男を警戒した。だが、男の顔が見えた時、言葉を失った。
整った顔に銀色の髪…忘れるはずがない。あの男だ。
あの夜、主人を…リアナ様を攫ったあの憎き帝国人。
部屋の空気が冷気を帯び始め、床や壁には霜がついていく。
ー「アイシクルランス」ー
メーリアの周りに即座に氷の槍が生成される。
「あなたにはここで死んでもらいます」
その言葉には明確な殺意が見える。
ルイは軍刀を抜き、戦闘体制に入る。
そしてここに同じ人を思う二人の戦いが始まったのであった。




