帝国編 第8話 『守るための戦い』
沈黙。ただ、それだけが続いていた。
数分前まであれだけ騒がしかった会議室は窓の外の風の音が聞こえるほど静かだ。
その理由はリアナが発した一言だった。
ー「それなら私に一つ考えがございます」ー
確かにリアナは元王国の人間だ。しかも騎士である。
王国のことはかなり知っているだろう。だからこそ驚いたのだ。
自国の情報の開示、ましては自ら作戦を考えるなどという行動。
それは自国に対する完全な“裏切り”を意味する。
「リアナ…それは…」
ルイはリアナの方を見る。リアナはそれに優しい顔で答えた。
「ありがとうルイ。でも大丈夫。これは私が決めたことだから」
リアナの目は真っ直ぐだった。まるで『私を信じて』と訴えるような目だった。
「わかった。君の意見を尊重するよ」
リアナは全体を見渡し、話し出した。
「それに、これは王国を滅ぼすための戦いではありません」
「それは一体、どう言うことだ?」
マークが困惑した表情でリアナを見る。
「これは…」
ー「私の大切なものを守るための戦いなのです」ー
「大切なもの…だと?」
「はい。よって取るのは…」
リアナが地図の一箇所を指差す。それに全員が驚いた。リアナが指した場所、それは…
ーーセフィロース王国、アルベール領ーー
「貴様、正気か?アルベール領は公爵の領地、ましてはお前の家がある場所であろう?」
「だからこそです。マーク様」
「どう言うことだ?」
「私は先程、これは“滅ぼす戦い”ではなく、“守る戦い”だと言いましたよね」
「ああ、確かにそういったが…貴様まさか⁉︎」
「ええ、アルベール領をこちら側に付かせるのです」
「そんなことが可能だと?」
「はい。信じてくれるのでしたら一夜のうちにアルベール領を手に入れてみましょう」
未だかつてこんなことを言い出した者がいただろうか…
捉えた敵兵も、人質も、全員が自分の国を守るために“黙秘”を貫いた。
だが、この女は違う。
元ではあるがこいつは敵に『私たちを仲間に入れろ』と言ったのだ。
マークは何かを感じた。久しく忘れていたあの感覚を…
胸が高鳴り、気分が高揚していく。この感覚を…!
マークに眠っていた”軍人”としての血が騒ぎだす。
「ふふ、ふふふっ、ふははははは!」
マークは少し不気味な笑い声を発した。
「面白い!やってみろ!リアナ・アルベール!」
「望むところです!」
こうして、この“守るための戦い”は火蓋を切ったのだった。




