表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣士様は女になりたい【完結済】  作者: ZIKIRU
第2章 帝国編
PR
18/53

帝国編 第6話 『あの日の言葉』

どうせこの話をしても、

あなたは覚えてすらいないでしょう…

あの日、私の人生を変えたあなたの…いや、“ルイ”の…あの言葉を…



私、ソフィア・アシュリーは帝国の公爵家であるアシュリー家に生まれた。

私はまだ文字も読めない幼い頃に見た古代魔法の本に興味を持った。

年を重ね、文字が読めるようになる頃には、もうすっかり夢中になっていた。

でも、現実は悲しいものだった。

『失われた魔法など今更調べて何になる?』『女として恥ずかしくないのか?』と…

家族も、友達も、みんな私を非難した。そんなことより公爵家の娘として自分を磨けと…


私が10歳を過ぎた頃だった。王家の人たちが訪れた。

きっと、姉さんの婚約話でも持ってきたのだろう。

社交辞令なんてつまんない。

私はもっと本が読みたいのに。

だからその間、ずっと庭の木の影で古代魔法の本を読んでいた。

この時だけ、私は嫌なことも全部忘れて自分の世界に浸ることができた。

そんな時、後ろから誰かに声をかけられた。

「ねえ、君、何読んでるの?」

振り返るとそこには銀色の髪に幼くも整った顔、私と同じ歳くらいの男の子が立っていた。

この時、私は初めてルイと出会った。

「うわ!何その本⁉︎」

ああ、こいつもか…。私は黙って去ろうとした。

だが、次に彼の口から出た言葉に足が止まった。



ー「面白そう!」ー



そんなこと、今まで言われたこともなかった。そこから私の人生は変わり始めた。

ルイは私が家を出て、王城の研究室で暮らすようになってからほぼ毎日のように来るようになった。

ルイは毎回扉を『バーン』と派手な音を立てて入ってくるものだから何度も注意した。

しかし、それがいつしか“ルイが来た“という合図のようになっていた。



お互い18歳を過ぎた頃だった。

ルイは帝国と王国の境界にある霧の森に行くことになった。

その時、私は初めて髪を結び、綺麗なドレスを着て見送りに行った。

こういう式典は嫌いだが、ルイの最後を見送ろうと初めて参列した。

ルイは私を見つけるなりこう言った。

「なんだ?おめかしなんかして?ソフィアらしくないな?」

「頑張ってオシャレした女性に言う言葉がそれ?あんた絶対モテないわよ」

「悪かったって。似合ってるぜソフィア!」

「もう遅いわよ!」

いつも通りのくだらない会話。

なんの意味もない会話だ。

「じゃあなソフィア!行ってくる!」

「早く行って!私もう疲れてきたから」

それが最後の会話だった。



あれから二年が経った。

何度視線を向けても、扉は沈黙を守ったまま。

騒がしかった研究室は見る影もなくなっていた。

そんな時、扉が音を立てて勢いよく開いた。

懐かしい声がした。

ずっと聞いていなかった彼の声が。

「おーい!ソフィア!いるかー?」

私は振り返った。銀色の髪に整った顔、ルイだった。

涙が出そうなのを我慢していつも通り話した。久々のルイとの会話はとても楽しかった。

でも、ルイは婚約者を連れていた。

怒りたかった。でも、声が出なかった。

ルイがとても幸せそうだったから。

私にはそれを壊すことができなかった。

そんな私が一番嫌いだった。




きっとあなたは覚えてないでしょう。

そして知らないでしょう。

あの時、たった一言、

『面白そう!』と言ったあなたの一言。

そのなんでもない…なんでもないたったその一言で…




ーー恋に落ちた女が一人、いたことをーー


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ