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剣士様は女になりたい【完結済】  作者: ZIKIRU
第2章 帝国編
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帝国編 第5話 『ルイ・トラニカル』[挿絵あり]

もうどれくらい歩いただろうか…

3日間野宿をはさんでずっと森の中を歩いている。

「ほら見えてきたぞ!」

先頭のダグラスが声を上げる。周りの木々は少なくなり、奥から光が漏れている。

ルイとリアナはその光に踏み込む。久しぶりの太陽が眩しい。

広がる景色をよく見ると奥の方に石造りの壁が見える。

「あそこがトラニカル帝国王都、オスタージュだ!」



それから少し歩いてあの石造りの壁まで来た。壁の手前には堀まである。

どうやらこの壁はオスタージュの城壁のようだ。

「久々に見たな〜。この城壁…」

ルイは懐かしそうに石の城壁を眺めている。

「おーい!橋はこっちだぞ!」

二人はダグラスについて行き、ついに帝国の王都、オスタージュに入ったのだった。



リアナは驚いていた。帝国といえば物騒な場所を想像していたからである。

だが、オスタージュはとても賑やかで、カザリアよりも活気がある。

一行は真っ直ぐ城に向かった。

城と言っても王国のように煌びやかな訳ではなく、要塞といった感じだ。

城に入ると、長い廊下に軍服を来た人たちが道を挟むように整列していた。

男性は黒の軍服、女性は白の軍服を着ている。

彼らの左胸には色とりどりの階級章が鈍く光り、その多くが高い地位にあることを示していた。

そして、ダグラスを先頭に歩き出すと、全員が一斉に頭を下げる。

「おかえりなさいませ。我が王よ」

その声は石壁に反響し、重々しい迫力となって一行を包み込む。

「驚いたか?リアナ?帝国(ここ)では男性、女性関係なく基本実力主義なんだ」

恐らく、この制度おかげで帝国はこれほどの国になったのであろう。

基本、血で階級が決まる王国とはまるで違う。

「第三様、まもなく与名式が始まります。ご準備を…」

「ああ、了解した」

一行は廊下を進むのであった。



与名式が始まった。ルイは煌びやかな飾りが着いた軍服で舞台に立っている。

近くにはマーク・トラニカルとジーク・トラニカルらしき銀の髪の男が立っている。

そしてダグラスが装飾の入った軍刀をルイに手渡し、“皇帝”として話しだした。

「今日より、この者に『ルイ』と名乗ることを許し、名を『ルイ・トラニカル』とする!」

広間中に大きな歓声が上がる。

この瞬間、名もなき帝国の第三王子は『ルイ・トラニカル』になったのであった。



式が終わった後、ルイがいつもの軍服に着替えてリアナに近づいてきた。

「与名おめでとう!ルイ!まさか本当に名前が“ルイ”になるなんてね」

「まあ、名前を考えるのは父上だからな。あの人らしいよ」

「そうね」

「あ、そうだ会いたい奴がいるんだよ。名を貰ったことを伝えに行かなきゃ」

「え?さっきの式でもう知ってるんじゃないの?」

「いやぁ…あいつは基本こんなとこに来ないからな」

「変わった人ね。古い知り合い?」

「知り合い…というよりは”幼馴染”ってところかな?ああ、それとこれ」

ルイは白い軍服をリアナに手渡した。

「着替えてきておいで。それから会いに行こう」

「私も?」

「そう。まあ、面白い奴だからさ!」



軍服に着替えたリアナはルイと一緒に長い廊下を歩いていた。

「この先にその“幼馴染”がいるの?」

「うん。ほら!あそこだよ」

ルイは一つの扉を指差した。そしてその扉を勢いよく開ける。バーン、と派手な音を立てて扉が開いた。

「おーい!ソフィア!いるかー!」

カーテンが閉まり、薄暗い部屋だった。

すると奥にいた紺色のぼさっとした髪と、だらしないドレスを着た女が振り返った。

「うるさいわねー!ドアはゆっくり開けろって…ああ…あんた…」

「久しいな!ソフィア!二年ぶりか?」

「そうね。相変わらずあんたは元気そうね…」

「リアナ、こいつはソフィア・アシュリー。一応、古代魔法学者だ」

「一応って何よ…で、そちらのお嬢さんは?」

「彼女はリアナ・アルベール。その…俺の…婚約者だ」

二人の顔が少し赤くなる。

「は…?」

「なんだソフィア?先を越されて悔しいのか?」

ルイはニヤニヤしながらソフィアを煽る。かなりの付き合いなのだろう。さすがは“幼馴染”ってやつだ。

「そんなんじゃないわよ。まあ、おめでとう…。で?ご祝儀でも貰いに来たの?」

「ただの報告だよ。それに俺は今日から『ルイ』だ!」

「名まで貰ったのね、あんたにしてはやるじゃない。それと実験の邪魔だからそろそろ出て行ってくれる?」

「じゃ、またちょくちょく顔出すわ!じゃあなソフィア!」

二人は部屋を出て行った。

沈黙が続く研究室でソフィアは窓のカーテンを少し開ける。久しぶりの光は目に悪い。

すぐにまたカーテンを閉め、机に伏せる。

「ああ…もう…だから嫌なのよ…」

静まり返った研究室に、彼女の溜息だけが残っていた。












挿絵(By みてみん)


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