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剣士様は女になりたい  作者: ZIKIRU
第1章 王国編
12/15

王国編 第12話 [挿絵あり]

「伝令ー!王城内に帝国兵と見られる者、一人が侵入!」

そんな知らせが届いだのはパーティーの終盤だった。

パーティーの会場はこの城の最上階だ簡単には来れない。

「急げ!城内をくまなく捜索し、取り押さえろ!」

兵士たちが城内を走り回り、捜索が開始された。リアナはパーティーの会場で窓の外を見ていた。

「ルイ…?」

リアナに一筋の希望の光が差した。

その時、リアナは誰かに手を掴まれた。振り返るとメーリアだった。

「リアナ様!私が必ずお守りいたします」

「え、ええ…頼むわ…」

悔しい。本当は今からでもここから抜け出してルイを探しに行きたい。

でも、もうこれ以上家族たちを悲しませたくない。

(ルイ…私は…どうすれば…)

その瞬間、『バリーン!』と後ろで大きなガラスの砕け散る音がした。

振り返ると、そこには帝国の軍服を着た男が屈んでいた。顔は見えないがリアナにはすぐに分かった。

「ルイ…!」

近くにいた兵たちの視線がルイに集まる。

「侵入者だー!取り押さえろー!」

ルークが怒鳴った。それと同時に兵士たちが一斉に攻撃を仕掛ける。

ルイは魔法を唱え出す。


ー「速度上昇(スピードアップ)」ー


ルイは剣を抜き、一瞬で3人の兵士を斬り殺す。その目は殺意に満ちている。

「ばっ、化け物〜!」

ブリヒはその場で尻餅をついた。ルイは即座に周囲を確認してリアナを見つけ出す。

「リアナ!」

ルイはものすごいスピードでリアナの前まで移動し、メーリアの手を振り解く。

身体強化されたルイの力はとても強い。

その瞬間をメーリアはしっかりとこの目に焼き付けた。

主人を、大切な家族を奪った男の顔を。整った顔、銀色の髪、そして軍帽に付いた帝国の紋章を…

ルイはリアナを抱えて反対側の窓に向かって走り出す。

「リアナ!口を閉じて!舌を噛むなよ!」

「え?、ちょ、まっ…」

リアナの返事も聞かず、ルイは窓に背をぶつけ、窓ガラスを叩き割る。

そのまま少し落下し、二人は向かいの塔の上に着地した。



月明かりが美しい。二人の顔が照らされている。

「リアナ!助けに来たぞ!」

ルイは自慢げな顔でリアナを見る。その顔がとても綺麗で愛らしい。リアナの好きな顔だ。

「ルイ…ありがとう」

リアナはルイをぎゅっと抱きしめた。暖かい。ルイの体温が心地いい。

「リアナ、時間がない。今、決めるんだ」

「今?何を…?」

「これからのお前の人生についてだ」

リアナはハッとする。ルイが帝国の人間だと全員にバレた以上、ルイは恐らく帝国に帰るだろう。

ついて行くか、ついて行かないか、決めなくてはならない。

だが、そんな事はすでに決まっていた。

「私、ルイと一緒に行きたい!でも…」

そう。問題はここからだった。リアナの中には望みが二つあったのだ。

一つはなりたい自分。女としてルイと一緒にいたい自分。

もう一つは剣を振るう理由を見つけてしまった自分。ルイの隣で戦い、支えたい自分だ。

「私は、女としてあなたの側にいたい。でも、あなたの剣としても支えたいの…」

「どっちかなんて選べないよ…」

リアナはその場でしゃがみこみ、うつむいた。

ルイは優しく声をかける。

「ありがとうリアナ。よく言った。それでいいんだ…」

「え…?」

「誰もどちらかにしろなんて言ってない。両方叶えよう!リアナの夢!」

ルイは両手を広げる。

「もっと欲張れ!もっと望め!これからの君の人生、好きなことを思いっきりしよう!」

ルイはそっと腰からリアナの剣を抜き、リアナに差し出す。

「剣を取れリアナ!騎士でも剣士でもない、俺の愛した…」



       ー「剣姫様」ー



リアナはハッと目を開いた。”剣姫”、それはあまりに自分らしく、私の欲しかった答えそのものだったからだ。

女が剣を振る。そんな考えたこともなかったような考えをルイは私に示してくれた。

恐らく帝国では剣姫など普通にいるのだろう。だが、それは自分にとって特別なものだった。

リアナは剣を取る。

「うん。私、貴方を支えるわ。剣姫として」

「俺も支えるぜ。剣士としてな」

二人は手を取り合い、走り出す。塔を越え、城壁を越え、どこまでも…

お互いを支え合いながら…



こうして一夜限りの”夢物語”は幕を閉じたのだった。










挿絵(By みてみん)



これにて、第1章 王国編は終わりです。

次回からは第2章 帝国編が始まります。お楽しみに。

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