王国編 第11話
空気が冷たい。満月がとても綺麗だ。王城では小規模ながらリアナの生還を祝うパーティーが開かれていた。
だが、それは表向きのもので王家の本当の目的はリアナをこの城から出さないための”縛り”であった。
リアナは久々に着るドレスにぎこちなさを感じながらパーティーに参加していた。
するとリアナのもとにアルベール家の者たちが駆けつけた。
「リアナ様。よくぞ…よくぞこ無事で…」
侍女長のメーリアが涙を拭いながらとてもも嬉しそうにしている。
するとメーリアは一つのネックレスを付けてくれた。
「これは私たちからのお守りです。もう二度と離れないように…」
そのネックレスはアルベール家の紋章が入っていた。リアナはそれを大切に胸にしまった。
「姉上!心配しましたぞ。帝国の関係者に囚われていたそうじゃないですか!よくぞこ無事で…」
次男、もとより今はアルベール家領主のルーク・アルベールも来ていた。
「………」
リアナは答えられなかった。ルイは確かに憎き帝国の人間だ。ましてや王族でもある。
ただ、リアナが見てきたルイ…いや、あの名のない第三王子は憎むに憎めなかった。
なぜ、あんな場所で暮らしているのか、なぜ、リアナの身分を知った上で殺さなかったか。
会いたい。会って洗いざらい吐かせてやりたい。あの憎き帝国の人間を…いや、違う。それは違う。
それは自分が本当に思っていることではない。都合よく解釈しているだけだ。
本当は純粋に会いたい。会ってまた、あの幸せだった生活に戻りたい。
離れたくない。失いたくない。帝国の第三王子ではなく”ルイ”を。
自分が愛した。あの男を…
恐らくアルベール家の者や、それ以下の貴族は国がリアナを殺そうとした事すら知らないのだろう。
ただ純粋に心の底から喜んでいる。だからこそ胸が痛い。本当のことを言えない自分が憎い。
「ルーク様〜。リアナ様は疲れておられるのです〜。あまりズカズカするのはよくないですぞ〜」
神官長のブリヒだ。ブリヒはリアナの耳元で呟く。
「余計なことを言ったら〜…。分かっておりますな〜?」
そう。本当のことを言ってしまえば自分だけでなく、家族まで危険が及んでしまう。
自分には何もできない。苦しい。ルイならこんな時、どんな言葉をくれるのだろう…
そんな思いに耐えながらリアナはずっと窓の外を見ていた。
ルイは身に纏った黒い軍服で夜道を駆けていた。
左の腰には軍刀を、もう一方にはリアナの剣を差している。
関門が見えてくる。ジェームズの姿が見えた。
「すまんな…ジェームズ…」
ルイは暗闇の中、背後に回り込み、軍刀の棟でジェームズを気絶させた。
ルイは魔法を唱える。と言っても普通の魔法ではない。
ルイはこの世界では珍しい”魔力循環体質者”である。
魔力循環体質者は他の魔法を使える者とは違い、魔法を”出すことができない”。
その代わり、体内に魔力を循環させることでこんなことができる。
ー「身体強化!」ー
ルイは強化された身体能力で屋根に飛び移り、その上を走り出す。王城に向かって。
囚われた姫を助けるために…
王城の城壁の向こうでは兵士が見張りをしていた。
兵士たちは何でもない与太話をしていた。
そして気づけなかった。城壁を背に飛び越える黒い影に…
ルイは城壁を越えた空中から自由落下で仕掛ける。
「〜それでリアナ様がっ……」
一人の兵士がルイに切り倒される。周りの兵士は空から侵入してきたルイに驚きを隠せない。
そしてその目は恐怖に変わる。帝国の軍服、それだけで敵と認識する。
そして王城に警告が走る。
こうして一つの”夢物語”は幕を開けた。




