王国編 第10話
ルイとリアナは二人で昼食を食べていた。
ここの喫茶店のサンドイッチとコーヒーは美味しい。ルイの行きつけだ。
「美味しい!王都にこんな店があったなんて」
「貴族の飯より美味いのか?」
「うーん何だろ、人の温かみを感じる」
「口に合ってよかったよ」
リアナは窓の外を見た。大勢の人が同じ方向に歩いている。
「ねえ、今日何かあるの?」
「え?あー今日は確か芝居があるんじゃなかったけ?」
「ルイ!私見てみたい!」
「芝居って言っても王道なもんだぞ?」
「それがいいの。ほら行くわよ!」
リアナはルイの腕を強引に引っ張った。さすがは元騎士、力が強い。
「分かった。行くって」
ルイは代金をテーブルに置いてリアナを追いかけた。
その後をつけるものたちにも気づかず…
芝居の内容は敵城に囚われた姫を王子様が助けるという何とも王道なものだった。
芝居が終わった後、リアナは興奮が冷めないのか、まだ芝居の話をしていた。
「やっぱりあの王子様が姫を助けるシーンは良かったなー」
「あんなの作り話だよ。“夢物語”さ」
「もー。ルイは冷たいなー。“夢物語”だからこそ面白いんじゃない!」
「んー。そうか?わからんなー?」
ふとルイは空を見た。少し赤みがかっている。
「もう日も落ちてきたし、夕飯食べて帰るか」
「そうだね。今日は楽しかったよ!ありがとうルイ!」
認識阻害の魔法で顔はよく見えないが、リアナがとても可愛く見えた。
ルイは連れてきて良かったなと思った。
少し路地に入ったとき、後ろから複数人の足音が近づいてくるのが分かった。
「誰だ⁉︎」
ルイはとっさに腰の剣を抜き、振り返る。
そこには武装した男3人とフードの付いたローブを着ている男がいた。男はとても太っている。
リアナのローブと同じで認識阻害の魔法がかかっているのか顔はよく見えない。
「おやおや、生きていらっしゃのですか〜?リアナ騎士〜?」
リアナの顔が真っ青になる。この気に触る喋り方。あの突き出た腹。当てはまるのはあいつだけだ。
「ブリヒ…様?なんで…」
ブリヒはフードをめくる。片目に奇妙なモノクルをつけていた。
「それは!解魔の目!」
解魔の目、そのモノクル型の魔道具は視界に映った魔法を強制解除するものだ。
無論、リアナの認識阻害も強制解除されてしまう。
「いや〜リアナ騎士、もう死んでしまったのかと思ってましたよ〜。生きてて良かった〜」
言い方が明らかにわざとらしい。
「おや〜?自慢の剣はどうしました〜?騎士が剣を手放すなど、あってはならないことなのに〜」
リアナは答えられなかった。苦しくて逃げ出したくなった。
「…おい。さっきから癪に触る喋り方しやがって」
ルイは剣を構える。その顔は怒りに満ちている。
「死にたいのか?」
「お前たち〜。あやつは倒さなくて結構です。そこの女を捕まえなさい〜」
3人の武装した男がリアナに襲いかかる。
「お前らっ!」
その時、ブリヒが後ろからルイに小声で何かを言った。
ー「⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎」ー
「……….!?」
ルイは動けなかった。突然の内容に頭が追いつかなかった。
「ルイ!ルイ!ねえ、どうしたのルイ!?」
リアナにその内容は聞こえなかった。だが、ルイが明らかに動揺している。
リアナは武装した男に拘束され連れて行かれた。
ルイはその場で立ち尽くして動けなかった。
「くそっ! 俺が!俺がっ…ああああぁぁぁぁ!」
ルイは自分の愚かさを悔いることしかできなかった…
リアナは王城の地下牢にいた。目の前にはブリヒがいる。
「貴様!ルイに何を言った!答えろ!」
その瞬間、ブリヒは大笑いした。気持ち悪い笑い方だ。反吐が出る。
「ルイw、ルイですかぁw それはあやつの名ではありませんよ〜。リアナ騎士〜」
「ど!? どういうことだ!?」
ルイはルイじゃない?じゃあなんだ?何だというのだ!?
「そもそもあやつに名なんてないんですよ〜」
「名が…無い…だと?」
リアナに最悪の可能性がよぎる。いやそんなはずない。だってあいつは…
「もう分かったんじゃないんですか〜?リアナ騎士〜?」
「や…やめろ…言うな」
「あやつの正体、それは〜」
ー「トラニカル帝国第三王子」ー
その頃、ルイは自分の部屋のクローゼットの前に立っていた。
ブリヒの言葉を思い出す。
ー「よろしいのですか?第三王子?」ー
あの時は動けなかった。だが、今は違う。
ゆっくりとクローゼットの仕切りを開ける。
そこにあったのは、“片刃の軍刀”そして“帝国の軍服”、“軍帽”だった。
ルイは軍服に着替え、軍刀を差し、最後に軍帽を被った。
その顔は覚悟が決まっている。
「さあ、始めるか…」
ー「“夢物語を”」ー
ん?と思った人は1話を読み直してみてください。




