甘味への布石
植物工場の仮稼働。
私はその様子を見ながら、若い農家達の動きを確認していた。
水の流れ。
光の当たり方。
葉の色。
「……うん」
まだぎこちないが、何とか形にはなっている。
そんな中――
「お嬢様!」
文官が駆け込んできた。
「どうしたの?」
「領都からレールが大量に届いております!」
私は思わず目を見開いた。
「来たのね」
計画が動き出す。
私はすぐに指示を出した。
「敷設隊を編成」
文官が頷く。
「先ずは近くの村へ」
そこが第一目標。
「それから領都へ延伸」
最終的には複線化。
「先ずは単線」
私は地図を指でなぞる。
「一本完成すればそれでレールやら人員の移動は問題無くなる」
基盤が出来れば、一気に加速する。
文官はすぐに動き出した。
そして私はその足で工場へ向かう。
「試運転、行きましょうか」
蒸気機関車――R410。
完成したばかりの車体が、レールの上に静かに佇んでいる。
私は乗り込み、運転を開始した。
蒸気が上がる。
シュー……。
ゆっくりと車輪が動き出す。
ガタン。ガタン。
「……いいわね」
問題なし。安定している。
加速も滑らか。私は満足そうに頷いた。
「こちらは問題無く稼働」
問題は別にある。私はすぐに指示を出した。
「運転士、整備士を募集」
開発者だけでは回らない。
「いつまでも開発の人に任せてばかりも居られないから」
現場を回す人材が必要だ。
「多めに募集をっと」
文官がメモを取る。
これで鉄道も動き出す。
私は深く息を吐いた。
「……ふぅ」
一通り指示を出し終わった時点で――
どっと疲れが来た。
「はぁ〜」
私は空を見上げる。
「何か甘い物でも食べたい気分」
ここには無い。
「だけどそんな物はここには無い」
領都に行けばある。
「まあ領都へ行っても超高級品」
私は苦笑した。
「私でも軽く食べれる物でもない」
砂糖。完全な贅沢品。
私は少し不満げに呟いた。
「砂糖を独占しやがって……」
その時。ふと、頭の中に引っかかる。
「ん?」
私は目を細めた。
「待てよ?」
砂糖そのものは難しい。
「近い物なら作れるな」
私は机に向かい、紙を引き寄せた。
とうもろこしはこの世界にもある。
そこから――
「確か、とうもろこしからコーンスターチ」
さらに。
「水飴……」
甘味。完全な砂糖ではないが代替にはなる。
私はペンを走らせた。
「とうもろこしはこの世界にもある」
ならば――
「ここから作るのも悪くない」
問題は私は地図を見る。
「農地か」
この辺りは厳しい。
私は少し笑った。
「まきちゃんの所だとその広い土地はある」
あちらは平地が多い。
大規模栽培が可能だ。
私は軽く頷いた。
「まきちゃんも誘ってとうもろこし作るか?」
甘味。それは贅沢品であり――
同時に、新しい産業になる。
私は椅子にもたれかかった。
「……これ、当たるかもね」
鉄道の次は。食。
そして――甘さ。
新しい流れが、また一つ動き出そうとしていた。




