影の開発
気にするな、と思っても気になる。
私は机に肘をつき、少し天井を見上げた。
「……うーん」
頭の中に浮かぶのは、あのギルドの装置。
そして“ソニン”という名前。
ロストテクノロジー。
再現できない技術。
それがこの世界に存在している。
つまり――
「恐らく……いや」
私は小さく呟いた。
「私なら軍事に使うなら隠し持ってる」
机の上で指をトントンと叩く。
表には出さない。切り札は、最後まで隠す。
「使う時になったら使う」
それが一番強い。
私は腰のポーチに手を当てる。
そこに入っているのは――
ベレッタ。
「私がベレッタを持ち歩いてる様に」
普段から見せびらかすものではない。
「普段なら持ってます〜っと見せびらかさない」
必要な時だけ使う。それが武器だ。
私は机の上で指をトントンと立てる。
そして顔を上げた。
「よし」
私は声をかける。
「文官さん!」
すぐに扉が開き、文官が入ってくる。
「はい」
「別のプロジェクトを立ち上げます」
文官の表情が少しだけ引き締まった。
「はい。どの様な?」
私は少し歩きながら言う。
「機械関連は大分慣れて来たわね?」
蒸気機関。工作機械。鉱山設備。
この数ヶ月で、技術者達はかなり育ってきた。
「そこから数人と新人さん数名を」
文官はすぐに頷く。
「解りました」
そして静かに聞いた。
「内容はどの様な?」
トントン。指が少し早く動く。
「新型戦闘車両の製作及び新兵器開発」
その瞬間。文官の表情が変わった。
「!?」
驚きはしたが、すぐに落ち着きを取り戻す。
さすがだ。私は続けた。
「極秘プロジェクトとし」
声を少し落とす。
「表向きは新型工作車両及び新型農機開発とする」
表の理由。
裏の目的。
文官は静かに頷いた。
「解りました」
そしてすぐに言った。
「建物も少し離れた場所にします」
私は頷く。
「そうして頂戴」
人の目が多い場所ではだめだ。
秘密は秘密として扱う。
文官は深く頭を下げた。
「承知しました」
足早に部屋を出ていく。
私は一人、机の前に残った。
そして紙を取り出す。
ペンを握る。
頭の中にある図面を、ゆっくりと紙に落としていく。
線。角度。寸法。
私は小さく呟いた。
「まずはこれね」
軽戦車。
L6。
そして――
「ブレダM35 20mm機関砲」
対空。対装甲。対魔物。
この世界で必要になる武器。
私は図面を見ながら小さく笑った。
「備えは必要よ」
平和は望む。
だが――
守る力がなければ、平和は守れない。
私は新しい紙を取り出した。
この世界で、初めての本格的軍事開発。
静かに――始まった。




