ギルドの遺産
冒険ギルドの建物が完成して、ギルドが引っ越して来た。
石造りの二階建て。入口には大きな看板。
「冒険者ギルド支部」
私はその建物を見上げながら腕を組んだ。
「一応、私がこの村の責任者という事で、ご挨拶に」
中に入ると、既にギルド職員達が忙しそうに動き回っていた。
掲示板に依頼書を貼る者。
机を運ぶ者。帳簿を並べる者。
中の様子を伺うとテキパキと準備を進めていた。
私は少し離れた場所から、その様子を眺めていた。
その時だった。
ピッ!
私は首を傾げる。
「何かしら?」
辺りをキョロキョロと見回す。
そしてまた。
ピッ!
私は眉をひそめた。
「……何処かで聞いた様な音」
頭の奥に引っかかる。
何処だったかしら……そんな事を考えていると、後ろから声がした。
「あはは。お嬢様。ギルドは初めてかしら?」
振り返る。
そこには――
スタイルの良い女性が立っていた。
長い耳。銀色の髪。どう見てもエルフだ。
私は思わずまじまじと見てしまった。
「ここまで細かく見たのは初めてです!」
エルフの女性は軽く肩をすくめた。
「まあお貴族様がギルドには滅多に来ないですからね」
そして指をさす。
「音はこちらです」
受付の横に、小さな箱が置かれていた。
木箱のような装置。
その上に金属板のようなものがある。
エルフは一枚のカードを取り出した。
「このギルド身分証をこの箱に差し掛けると……」
カードを近づける。
ピッ
箱が光る。
「登録内容等が確認出来ます!」
私は固まった。
「はぁ?」
思わず声が出る。
「非接触型カード!?」
エルフはきょとんとしている。
「非接触……?」
私は箱を覗き込んだ。
金属板。内部構造。
これは――完全にRFIDだ。
「何故!?ギルドに!?」
私は箱をひっくり返すように観察する。
回路。魔石。刻印。
理解が追いつかない。
その時、私はカードに刻まれた文字を見た。
「こっ、この名前は?」
私はカードを指差す。
エルフは普通に答えた。
「うーむ。ギルドではソニンって呼んでますね」
私は呟く。
「ソニン……」
胸がざわつく。まさか。
「……まさか」
私はエルフに詰め寄る。
「これ!如何やって作ったの?!?」
エルフは少し困った顔をした。
「えーっと」
そして言う。
「かの昔2人の天才が作ったと言われてますね」
私は固まる。
「げっ」
嫌な予感しかしない。
「まさかあの2人?」
私は装置をもう一度見る。
だがエルフは続けた。
「でも仕組みがよく分からなくて」
私は振り向く。
「え?」
エルフは箱を軽く叩いた。
「この箱の再現は出来ますが」
そして笑った。
「ギルドではこう言う使い方をしてますね」
私は目を見開く。
「どーゆーこった!?」
再現は出来る。
でも仕組みが分からない。
つまり――私は呟いた。
「ロストテクノロジーになっている!?」
エルフは首を傾げた。
私は箱を見つめる。非接触カード。RFID。
この世界に存在するはずがない技術。
私は小さく呟いた。
「……誰よこれ作ったの」
胸の奥がざわつく。
この世界にはまだ――何かある。




