通信網と鉄路準備
トンネルの中は、以前とはすっかり様子が変わっていた。
両側の壁には補強されたコンクリートのアーチ。
中央には真っ直ぐ伸びる鉄のレール。
「うん」
私はトンネルの中を見渡す。
「レールはトンネル内部、複線化は敷設は完了」
単線ではない。行きと帰りで線路を分けた、複線だ。
これなら将来、輸送量が増えても対応出来る。
私は少し考える。
「如何やらまきちゃんの方で蓄電型の動力機関を作っている様なので」
私は苦笑する。
「これはまきちゃんに任せるとして」
あちらはあちらで面白い事をやっているらしい。
蓄電池を使った動力機関。
つまり電動機。
蒸気とは別の技術だ。
「まああっちはあっちで進めてもらいましょう」
私はトンネルから外へ出た。
問題は別にある。
「問題はレールの大量生産か」
鉄はある。石炭もあるが。
「ここだけでは限界があるなぁ」
今の設備では生産量が足りない。
鉄道を延ばすには、レールが大量に必要になる。
私は腕を組む。
「これも文官さん経由で山の中に大型溶鉱炉を造るって話だから」
確か計画は進んでいたはず。
私は小さく頷く。
「それが完成するまでは待った方が良いかなぁ?」
無理に作っても効率が悪い。
ならば。私は地図を広げた。
「ならばだ」
今出来る事を進める。
「路線を直ぐに引ける様に町までの準備に掛かるか」
レールが来たら、すぐ敷けるように。
路盤整備。橋。切り通し。
やれる事はいくらでもある。
私は少し考える。
「こちらも複線化の方が良いか」
最初から複線。後で作り直すより、最初にやる方が早い。
そうなると――私は呟く。
「機関車はR410改はあと二両増産か」
輸送量を考えると足りない。
私は振り返り、文官に言った。
「増産の指示出しておいて」
文官はすぐに頷く。
「承知しました」
私は笑う。
「先ずは準備8割はしておかないとね」
物事は準備が大事。
走り出してからでは遅い。
私はふと思い出す。
「そういえば」
通信。こちらも進めていた。
「有線電話は作り終わったので」
私は机の上に置かれた装置を見る。
木箱。受話器。ハンドル。
前世では当たり前の機械。
この世界では初めての物だ。
私は文官に言った。
「まずはまきちゃんの所へ一台」
トンネルを通して電線を引く。
「私と繋ぐ」
これは重要だ。
私は笑う。
「これは、、そうね」
少し考えてから言った。
「ホットラインてきな?」
文官は首を傾げていたが、私は気にしない。
そして続ける。
「そして、私の領地には、交換手を配置」
一箇所に通信所を作る。
そこから線を分ける。
鉱山にトンネル内部、村の各所。
「必要そうな所へ電話を配置」
これで報告は一気に早くなる。
私は満足そうに頷いた。
「これで各連絡は、大分楽になるかな?」
鉄道と電話。物流と通信。
世界を変える二つの道具が、少しずつ揃い始めていた。




