次の課題は食料
あれから数十日。
トンネルの前に積み上がっていた土砂の山は、いつの間にか綺麗さっぱり消えていた。
今ではコンベアーの上を流れてくるのは、土砂ではなく黒い石炭だ。
ガラガラと音を立てながら運ばれてくる石炭を見ながら、私は腕を組んだ。
「やっとここまで来たわね」
こっち側にもコークスにするための設備を整えた。
石炭を焼き、炭素を濃縮したコークスを作る。
これがあれば高温の炉が使える。
つまり――鉄の生産が安定する。
「これで鉄の生産は安定するだろう」
私は炉から上がる煙を眺めながら、小さく息を吐いた。
「中々長かったわ」
ここに来るまでに、どれだけ準備をしただろうか。
鉱山の整備。トンネルの掘削。
コンベアー。石炭輸送。
ようやく全部が繋がった。
私は鍛冶場の奥を見た。
そこでは蒸気機関車の部品が並び始めている。
「R410もかなりの速度で形になって来たかな??」
巨大なボイラー。フレーム。車輪。
まだ完成ではないが、確実に機関車の形が見えてきている。
鉄の生産も順調だ。
「鉄も備蓄に回せる程には生産出来ている」
これが一番大きい。
今までは作った分をすぐ使っていたが、ようやく備蓄が出来始めた。
私は工場の奥を見る。
そこにはエンジンの試作機が置かれていた。
「エンジン2種類も組み上がりつつある」
空冷V8。そして空冷V6。
どちらもまだ試作段階だが、設計通りに組み上がってきている。
私は苦笑する。
「まあ、車体の方は流石にまだまだ先」
大型機械のフレームは簡単には作れない。
それでも。
「でも準備は整いつつある」
確実に前には進んでいる。
私はしばらく考えた。
「ここでの他の問題は?何かしら?」
設備。人員。資材。
どれも今のところ大きな問題はない。
私は近くにいた文官を呼んだ。
「文官さん」
文官はすぐに歩み寄ってくる。
「はい、お嬢様」
私は聞いた。
「何か問題はある?」
文官は少し考えてから答えた。
「そうですね」
そしてゆっくり言う。
「今の所、大きな問題はございませんが」
私は首を傾げる。
「が?」
文官は続けた。
「食料はまだまだ運び込み量が多いですな」
私は「ああ」と小さく声を出した。
「食料か」
確かにこの村は急激に人が増えた。
鉱夫。職人。労働者。
それだけ食料も必要になる。
私は腕を組む。
「メインは小麦だけど」
だが問題がある。私は周囲の地形を見る。
山。岩。傾斜。
「ここはどちらかと言うと田畑を作るには不向きな土地柄」
平地が少なし土も浅い。
農業向きとは言い難い場所だ。
私はため息をついた。
「こればかりは如何にもならんか?な?」
輸送で補うしかないのか。
それとも別の方法があるのか。
私は空を見上げた。
この村はまだ発展の途中。
新しい問題は、必ず次に現れる。
そして――
それを解決するのが、私の仕事だった。




