山を貫く道
異変は、トンネルの奥の掘削現場から始まった。
作業員達はいつものようにツルハシを振るっていた。
ガン。
ガン。
ガン。
その時だった。
一人の作業員が手を止める。
「おい!何か音が聞こえないか?」
隣の作業員が振り向く。
「音?どんな?」
「地響きの様な」
周囲の作業員達もツルハシを止める。
「落盤か?」
「いや?」
「何だ?」
そして一人が声を張り上げた。
「おい!みんな!一度、静かにしろ!」
ツルハシの音が止まる。
トンネルの奥は静まり返った。
その時――
ゴォォォ……
確かに聞こえた。
低い振動のような音。
誰かが呟く。
「地響きだな!なんだ?」
次の瞬間だった。
ゴンッ!!
岩壁が崩れた。
そして――ぽっかりと空間が開いた。
「何だ!?」
向こう側に、空洞がある。
作業員達がざわめく。
「空洞だ!」
「貫通したのか!?」
その知らせは、すぐに文官を通じて私の元へ届いた。
文官が息を切らして駆け込んでくる。
「お嬢様!トンネルが!貫通しました!」
私は思わず立ち上がった。
「……本当?」
「はい!」
私はすぐに外へ出る。
「私もトンネルに向かうとするか!」
そして現場に着いた。
トンネルの奥には人だかりが出来ている。
作業員達が歓声を上げていた。
そして――向こう側から声が聞こえた。
私は声を張り上げて
「まきちゃーん!」
「ゆきちゃん!」
穴の向こう。
薄暗いトンネルの向こう側。
そこには――
ましちゃんの姿があった。
向こうも工事現場に来ていたらしい。
作業服姿。ヘルメット。同じ格好だ。
私は思わず笑う。
そして手を振った。
向こうもすぐに手を振り返してくる。
その時だった。
両側の文官達が同時に声を上げる。
「お嬢様!」
「まだ危険です!」
「崩落の可能性があります!」
「完全な補強が終わるまで近づかないでください!」
私は思わず苦笑した。
「まあ」
確かにその通りだ。
今はただ岩が抜けただけ。
補強工事はまだ。天井も壁も不安定。
穴の向こうに向かって声を上げてる。
「ゆきちゃん!」
「また後でね!」
私は元気な声で
「はーい!」
私はトンネルを見上げた。
岩の天井。まだ荒い削り跡。
ここを掘り始めてから、かなりの時間が経った。
長かった。このトンネル。山を越える道。
そして今――ついに繋がった。
私は小さく呟く。
「成功ね」
もちろん、これで終わりではない。
補強工事。換気設備。輸送路。
そして――やる事は山ほどある。
それでも私は笑った。
「いよいよ」
二つの領地。
二つの世界。
それを繋ぐ近道――
ここに生まれたのだった。




