掘り進む山
コンベアーを設置してから、作業の様子は一変した。
私はトンネルの入口近くに立ち、ゆっくりと動くベルトを眺めていた。
ゴトゴトと音を立てながら、土砂が外へ運ばれていく。
「……楽になったわね」
横にいた文官が頷く。
「ええ。かなり」
今までは、作業員が土を担ぎ出し、荷車に積み、外へ運ぶ。
それだけで大仕事だった。
今は違う。
ツルハシで掘る。
スコップでコンベアーに乗せる。
それだけでいい。
私は腕を組んで頷いた。
「効率は確実に上がった」
ただ――私は視線を遠くへ向けた。
そこには、大きな土の山ができている。
いや。山というより――丘。
トンネルから出た土砂が、どんどん積み上がっていた。
私は苦笑する。
「……順調に積み上がってるわね」
文官も同じ方向を見る。
「はい」
私は少し首を傾げた。
「これ良いのか悪いのか」
土を出すのは楽になった。
だがその分、土の量も増える。
私は肩をすくめた。
「まあ効率が上がったから良いか」
とりあえず今はそれでいい。
土の問題は後で考える。
私はトンネルの奥を見た。
灯りの中で作業員達が掘り続けている。
ガン。ガン。ガン。
私は文官に聞く。
「進捗は?」
文官が帳簿を見る。
「計画では、三分の一ほどです」
私は頷いた。
「三分の一か」
まだ先は長い。順調だ。
私は少し笑った。
「流石ね。人海戦術」
人が多いのでそれだけで工事は進む。
私は空を見上げた。
「まきちゃんの方は、どこまで進んでるのかしらね」
向こうも同じように掘っているはずだ。
正確な進捗は分からない。
無線で聞く事はできるが細かい距離までは分からない。
私は肩をすくめた。
「まあ掘り続ければ、いつかは貫通する」
それがトンネルだ。
私は足元のコンベアーを見た。
「こっちも量産進めてるわ」
蒸気機関。滑車。ベルト。
今では複数のラインが動いている。
文官が言う。
「材料の消費が大きいですが」
私は頷いた。
「そこは仕方ない」
特に問題なのは――ベルト。
私は顔をしかめた。
「蛇の皮」
巨大蛇の抜け殻。
魔物素材。性能はいい。
私は思わず呟く。
「……気持ち悪い」
文官が笑いを堪えている。
私はため息をついた。
「まあ代替素材が出来るまで我慢ね」
そして私は別の場所を見る。
トンネルとは反対側。
そこでは別の作業が進んでいた。
鉱山。私は言った。
「人手余ってるから鉄鉱石も掘らせてる」
文官が頷く。
「備蓄ですね」
私は腕を組んだ。
「そう」
トンネルが貫通すれば。
物流が変わる。鉄の需要も増える。
建築。機械。線路。
全部鉄を使う。私は小さく笑った。
「その時に足りませんじゃ困る」
だから今のうちに掘る。
備蓄する。
私は遠くの山を見た。
「トンネルが開通すれば需要は山ほどある」
その時この鉄は――全部使われる。
私は静かに頷いた。
「今は貯める時期ね」




