蒸気の動力
私は腕を組みながら、目の前の機械を眺めていた。
「……出来た」
小さな鉄の塊。煙突。圧力計。
そして回転軸。
「小型蒸気機関」
横にいた文官が少し感心した声を出す。
「これが……動くのですか?」
私は頷いた。
「動くわよ」
石炭を入れる。水を沸かす。
蒸気圧でピストンを動かす。
そして――回転。
私は指で機械を軽く叩いた。
「シンプル」
複雑な燃料もいらない。
この拠点には石炭がある。
つまり燃料問題はない。
私はレバーを操作した。
シュゥゥ……
蒸気が吹き出す。
そしてゆっくりと回転が始まった。
ギィ……
ゴォン……ゴォン……
文官が目を丸くする。
「おお……」
私は満足そうに頷く。
「よし」
次は――ベルトコンベアー。
蒸気機関の回転を滑車に繋ぐ。
そしてベルトを回す。
ただ問題が一つあった。
私はベルト部分を見て顔をしかめた。
「……」
「これ」
文官が少し困った顔で答える。
「魔物素材です」
私はため息をついた。
「知ってる」
大蛇。巨大蛇の抜け殻。
それを加工してベルトにしている。
ゴムがないから代用品だ。
私は指でつつく。
「キモ……」
素材としては優秀らしい。
柔らかいし強い。
耐久性もある。
私は仕方なく頷いた。
「まあ使えるならいい」
私は全体を見渡す。
蒸気機関。滑車。
そしてベルトコンベアー。
トンネルの奥へ伸びている。
私は腕を組む。
「これで手運びは終了」
文官が理解した顔で頷く。
「鉱石も土砂も」
私は言った。
「全部流す」
コンベアーで外まで。
人が担ぐ必要もない。
荷馬車での積み込みもいらない。
私は満足そうに笑った。
「効率爆上がりね」
遠くで作業員達がざわついている。
ベルトが回る。
土砂が流れてくる。
みんな目を丸くしていた。
私はその様子を見ながら呟く。
「蒸気って便利」
そしてふと思う。
「……そういえば」
蒸気機関。回転力。輸送。
ここまで来たら。
私は机の上に紙を広げた。
「蒸気機関車」
設計しておくか。
私はスキルを起動する。
頭の中に設計図が浮かぶ。
まず――「小型」
私は呟く。
「R410」
前世で見た機関車。小型で扱いやすい。
私は鉄道幅を考える。
「軌間は……」
しばらく考える。
そして言った。
「762ミリ」
ナローゲージ。
山岳向き。小回りも利く。
私は頷いた。
「これに改良」
前世。
まきちゃんと旅行した時に乗ったやつ。
その記憶を引き出し私はさらに考える。
「長距離用は?」
R410を基本形として。
長さサイズを拡張する。
私はスキルで確認する。
設計計算が頭の中で走る。
「1.5倍」
うーん。
「大差ない」
「じゃあ」
「2倍」
スキルの解析結果を見る。
「……悪くない」
だがもう少し。
私は呟く。
「試しに2.5倍」
計算が走る。蒸気圧。
ボイラー容量。牽引力。速度。
私は目を細める。
「……お」
これは悪くない。いやかなりいい。
私は笑った。
「ほんとスキル便利すぎ」
速度。馬力。両方バランスがいい。
私は紙に線を描いた。
「2.5倍パターンこれがベストかな」
私は椅子に座り直す。
機関車の設計図。煙突。ボイラー。
車輪。動輪。
すべてが紙の上に形になる。
私は小さく笑った。
「そのうち線路も作るか」
蒸気。鉄。石炭。
この世界はもうすぐ――産業革命に入る。




