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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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動く鉄の怪物

それから数日後。

石炭を積んだ輸送部隊が拠点へ戻ってきた。

私は広場でその報告を受けていた。


「今回は何事もなく戻りました」


文官が帳簿を閉じる。

私はほっと息を吐いた。


「良かった」


山道の輸送は危険だ。

魔物。崩れた道。盗賊。

どれが出てもおかしくない。


それを考えれば、無事に戻っただけで十分な成果だ。


私は軽く頷いた。


「御者達にも礼を伝えておいて」


「承知しました」


だが報告はそれで終わらなかった。

護衛の一人が、少し困った顔で言った。


「お嬢様。向こうで妙な物を見ました」


私は首を傾げる。


「妙な物?」


男は言葉を探しているようだった。


「見たことない物です」


私は腕を組んだ。


「どんな?」


男は頭を掻く。


「車輪じゃないんですが……動いてたんです」


私は眉をひそめる。


「車輪じゃない?」


男はさらに言う。


「それに嘴みたいな物が地面を掘ってました」


私は首を傾げる。


「……嘴?」


別の護衛も口を挟む。


「馬も付いてないのに走り回ってました」


私は思わず言った。


「何のこっちゃ」


全く要領を得ないし説明が曖昧すぎる。

私は顎に手を当てた。


「絵描ける人いる?」


護衛達が顔を見合わせる。

やがて一人が手を挙げた。


「多少なら」


私は紙を渡す。


「描いて」


しばらくして数枚の紙が机に並んだ。

私はそれを一枚ずつ見ていく。

……意味が分からない。


丸い物。長い腕。変な形。


私はため息をついた。


「余計分からん」


だが。


三枚目。

四枚目。

五枚目。


その時、私は手を止めた。


「……」


目を細める。

紙に描かれているのは――四角い胴体。

履帯のようなもの。

そして前に突き出した長い腕。


先端には――バケット。


私は思わず呟いた。


「ショベルカー?」


護衛達が首を傾げる。

私は紙を見つめたまま言った。


「……まさか」


頭の中で一つの名前が浮かぶ。

私は苦笑した。


「作ったの?まきちゃん」


この形は間違いない。

ショベルカー。重機。


この世界で私は椅子にもたれた。


「やられた」


しばらく黙る。そして紙を描いた男を見る。


「これ描いたのあなた?」


男が頷く。


「はい」


私は袋を取り出した。


「これ」


男が驚く。


「え?」


私は笑った。


「金一封よ!良い情報だった」


男は慌てて頭を下げた。


「ありがとうございます!」


私は再び紙を見るとどう見ても私も知ってるショベルカー。


この世界でそれを作った。

私は小さく笑った。


「こりゃーやられたなぁ」


悔しい。本当に悔しい。

だがこれは領主の娘としての悔しさではない。


私は呟く。


「エンジニアとして悔しい」


私は最初から諦めていた。

重機は無理だって。だって燃料がないから。

材料がないから。そう思っていた。


まきちゃんは違った。恐らく何らかの方法で燃料も作った。

私は机を指で叩く。


「この世界で重機?」


私は天井を見上げる。


「私は最初から考えてもいなかった」


いや。違う。私は考えなかった。


洗濯機は作ったし発電も。

スキルも最高の物を得た。


それなのに?私は笑った。


「何で最初から諦めた?」


机の上の絵を見る。

ショベルカー。鉄の怪物。

私は静かに呟いた。


「……負けてられないわね」

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