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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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距離ゼロの通信

それから二、三日が経った。

私は相変わらず忙しい。


朝は鉱山の確認。

昼は村の整備。

夕方はトンネル工事の進捗。


やる事は尽きない。


「……忙しいわねぇ」


思わず呟くと、横にいた文官が苦笑した。


「お嬢様が増やしている仕事も多いですから」


「必要な事よ」


私は即答する。

実際、やらなければならない事ばかりだ。

そんな中、ひとつ大きな動きがあった。

研究室の前に、荷車が停まっている。

私は腕を組んでそれを眺めた。


「準備いい?」


文官二人が深く頭を下げる。


「はい」


固定式無線機の前で操作を覚えていた文官達だ。


この二人は――今日、領都へ戻る。


私は笑った。


「帰宅ね」


文官も少し笑う。


「久しぶりの領都です」


彼らはここ数日、みっちりと無線機の操作を覚えた。


電源の入れ方。

周波数調整。

通信確認。

簡単な整備。


一通りは問題ない。


私は机の上の無線機を見る。


「領都に着いたら私の部屋にある無線機の確認!」


文官が頷く。


「はい」


私は続ける。


「そうすればこことの距離はゼロ」


文官が笑う。


「確かに」


今まで。領都との連絡は早馬だった。

何日もかかる。

無線機があれば違う。


「文のやり取りは終了」


私は少し誇らしげに言った。

文官が頷く。


「通信で済みます」


そしてもう一つ!私は指を立てた。


「向こうに着いたら無線機の操作を他の文官にも教えて」


文官が答える。


「承知しました」


そうすれば。

領都でも通信担当が増える。

私は机を軽く叩いた。


「そのうち無線機を増やす」


文官が少し考える。


「そうすれば……」


私は笑った。


「半径五、六百キロ全部無線で対応出来る」


文官は目を丸くした。


「それは……」


私は言った。


「革命よ」


本当にそうだ。距離が消える。

情報が瞬時に届く。

それは政治も軍も商業も全部変える。

私は腕を組んで満足そうに頷いた。


「いい時代になってきたわ」


やがて荷車が動き出す。

文官二人がもう一度頭を下げた。


「行って参ります」


私は軽く手を振る。


「いってらっしゃい」


荷車はゆっくりと村を出ていった。

領都までの道は長い。


着けば――

この拠点と領都の距離はゼロになる。


私は空を見上げた。

そしてふと思い出す。


「……そういえば」


山の向こうを見る。

鉄鉱石を積んだ荷馬車隊。

出発してから、そろそろ数日。


私は小さく呟く。


「そろそろまきちゃんの開拓村に着く頃よね」


山道。魔物。盗賊。


危険は多い。私は少しだけ心配になった。


「無事に着いたかしら」


しばらく山の方を見つめる。

そして小さく笑った。


「まあ大丈夫よね」


それでも私は心の中で思う。

無事に着いてくれるといいんだけどなあ。

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