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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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山の湯、ひとやすみ

「ふぅ〜……」


私は腰に手を当てて、完成したばかりの排水路を眺めた。


温泉から引いた水は、U字溝を通ってゆっくりと流れていく。

まだ仮設ではあるが、これでトンネルの中に湯が溜まる心配はひとまずなくなった。


「一応、終わりね」


横にいた文官が頷く。


「はい。仮設ですが、十分に機能しています」


私はU字溝をしゃがんで軽く叩く。


「まあ、仮だけど。そのうち金属が潤沢に生産できるようになったら、ちゃんとパイプに変更しないとね」


鉄の生産が安定すれば、金属管を作ることもできる。

そうなれば温泉ももっと効率よく管理できるだろう。


だが――今はこれで十分だ。

私は立ち上がり、少し離れた場所を見る。

そこには、木の板で囲われた簡単な湯船があった。

丸太を組み、板で仕切っただけの簡易施設。

湯はたっぷり流れ込んでいる。

私は満足そうに頷いた。


「よし!露天風呂完成」


文官が苦笑する。


「露天……風呂ですか」


私は肩をすくめた。


「空の下のお風呂よ」


この世界にも風呂文化はあるが、こういう形は珍しい。


私は伸びをした。


「さーて!久々にひとっぷろ浴びますか〜」


文官が呆れたように笑う。


「お嬢様は本当に自由ですね」


私は答える。


「働いた後の風呂は最高なのよ」


それからしばらくして。

私は湯船に肩まで浸かっていた。


「ふぁ〜……」


思わず声が漏れる。

温泉の湯は体をじんわり温めてくる。

温度も丁度いい。


「中々の良い湯加減」


空を見上げる。山の空は広い。

風も気持ちいい。

私は湯の中で腕を伸ばした。


「極楽〜」


この露天風呂。


実は――私専用のものだった。

私は最初、みんなと同じでいいと言った。

鉱夫達も使うし、同じで問題ないと思ったのだ。


その時、文官にものすごく怒られた。


『お嬢様は領主家の方です』


『護衛の問題があります』


『一緒は駄目です』


『絶対に駄目です』


ものすごい勢いだった。

私は思い出して苦笑する。


「そんなに怒らなくてもねぇ」


結局。鉱夫用の風呂とは別に――

私用の湯船が作られてしまった。

貴族特権というやつらしい。

私は湯に浸かりながら呟く。


「まあこれはこれで悪くないか」


しばらく静かに湯に浸かる。

遠くから聞こえてくる音。


ツルハシ。荷車。人の声。


この場所は確実に動いている。

私は小さく笑った。


「さーて」


湯から上がりながら言う。


「これでみんなもリフレッシュしてくれると良いなぁ」


温泉。町。鉱山。トンネル。

やる事は山ほどある。

少しくらいは休みも必要だ。


私は空を見上げた。

湯気がゆっくりと空へ消えていく。


この温泉も――

この町の、大事な一つになる気がしていた。

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