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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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資材の現実

街道用トンネルの工事は、順調に進んでいた。

四交代制。昼夜を問わない作業。


ガン。

ガン。

ガン。


山の中にツルハシの音が響き続ける。


「良い調子ね」


文官が帳簿を見ながら頷く。


「はい。予定よりも早いです」


温泉の件もあったが、工事自体に大きな影響は出ていない。

岩の割れ目から湧き出した温泉水は、簡易の排水溝を掘って外へ流す形で対応している。


本格的な施設は後回し。


まずは――トンネルを貫通させる。

それが最優先だ。

私は頷いた。


「今は掘り進める事に集中!それで良いわ」


文官も同意する。


「こちらは問題ありません」


私は軽く手を叩いた。


「よし!問題ナッシング!」


しかし全てが順調というわけではなかった。

私は机の上に置かれた報告書を見ながら、少し肩を落とす。


「……レンガ」


文官が苦笑する。


「はい」


あの計画。


トンネルから出る土砂を使ってレンガを作る案。

私は最初、良い案だと思っていた。

問題があった。


「焼く燃料ね」


文官が紙を広げる。


「試算しました」


そこには、びっしりと数字が書かれていた。

私はそれを見て思わず言った。


「多っ!」


文官も同じ顔をしている。


「ええ……」


レンガを焼くには高温が必要。

つまり大量の燃料。

この場合――木材だ。


問題はその量だった。私は紙を指で叩く。


「これ全部?」


文官は静かに頷く。


「はい」


私は天井を見上げた。


「……えらい量ね」


レンガ窯を回すための木材。

それを領都から運ぶ。

この周辺で伐採してもいいが――

今はそれどころではない。


私は腕を組む。


「輸送コスト、労働力、時間」


全部計算すると結論は一つだった。

私は言った。


「今は無理」


文官もすぐに頷いた。


「同意します」


そして静かに言う。


「木材は建築に使うべきです」


私は苦笑した。


「そうなのよ」


木材は貴重。それを燃やしてレンガを作る。

今は――非効率。


「燃料にするくらいなら」


私は村を見た。修復中の家。新しい倉庫。

作りかけの鍛冶場。


私は言った。


「そのまま建物に使った方がいい」


文官は即答する。


「その通りです」


私はため息をついた。


「残念だけどレンガ作りは中止」


文官がメモを書き込む。


「了解しました」


そうなると問題はもう一つ。

私は外を見る。


山の麓、そこには――土砂の山。


トンネルから出た土が大量に積まれている。

私は苦笑した。


「……邪魔ね」


文官も同じ顔をしている。


「はい」


レンガにも出来ない今すぐ使い道もない。

私は肩をすくめた。


「仕方ないわ」


「とりあえず積んどきましょう」


文官が頷く。


「将来使える可能性はあります」


私は笑った。


「その時に考えればいい」


今は優先順位がある。トンネル。村の拡張。

やる事はいくらでもある。

私は遠くの山を見る。


ツルハシの音が響いている。


ガン。

ガン。

ガン。


山は少しずつ削られていく。

私は腕を組んで言った。


「まずはトンネル街道、全部はそれから」


文官が深く頷いた。

この小さな村は、まだ発展の途中。


確実に少しずつ――前へ進んでいた。

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