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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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山の湯脈

街道用トンネルの工事は順調に進んでいた。

倍増した作業員。

四交代制。

昼も夜も関係なく、山を掘り続ける。


ガン。

ガン。

ガン。


ツルハシの音が絶え間なく響く。

私は見回りで少し離れた場所から、その様子を眺めていた。


「かなり進んできたわね」


隣に立つ文官が頷く。


「はい。予定よりもかなり早いです」


人手があるというのは、それだけで強い。

作業は止まらない。

昼でも夜でも掘り続ける。

そのおかげでトンネルは、山のかなり奥まで進んでいた。


その時だった。


坑道の奥から突然叫び声が響いた。


「止めろ!」


「掘るな!」


ツルハシの音が止まる。

私は顔を上げた。


「……何?」


少しして、坑道の奥から作業員が走って出てきた。息を切らしている。


「お嬢様!」


「どうしました?」


私は眉をひそめた。


「崩落?」


作業員は首を振る。


「いえ!水です!」


私は少し驚いた。


「地下水?」


山のトンネルでは珍しくない。

作業員は慌てて言った。


「違います!」


「水が……熱いんです!」


私は目を細めた。


「……熱い?」


文官も首を傾げる。


「それは……」


私はすぐに言った。


「見に行くわ」


坑道へ入り粉塵マスクをつけ、奥へ進む。

しばらく歩くと問題の場所が見えた。

そして私は思わず足を止めた。

岩の割れ目から――水が噴き出している。


ちょろちょろではない。

ドバドバでもない。


確実に流れになっている。

岩の隙間から勢いよく湧き出し、坑道の床を小さな川のように流れていた。


「……おお」


思わず声が漏れる。作業員が説明する。


「急に噴き出したんです!」


私はしゃがんで手を近づけた。

湯気が立っている。水に触れる。


「……温かい、、てかあちっ!」


しっかり温度がある。

私は笑った。


「これ温泉よ」


作業員達がざわめく。


「温泉……?」


私は頷いた。


「そう」


岩の奥から湧き出している。

しかも水量はかなりある。

坑道の排水を作らなければ、作業の邪魔になるくらいだ。


文官が驚いた顔をする。


「かなりの量ですね」


私は頷く。


「ええ。これは当たり」


私は流れる湯を見ながら言う。


「ちゃんと湯脈に当たったわね」


地下の熱水層。そこにトンネルが当たった。

珍しい事ではない。


この量は――かなり良い。

作業員が不安そうに聞く。


「トンネル工事は……」


私は少し考えた。水量は多いが制御出来ないほどではない。


私は言った。


「まず排水路を作り流せば問題ない。その後にパイプに変更」


作業員達はほっとした顔をした。

私はもう一度湯を見た。

湯気が立ち上る。

そして思わず笑った。


「……これ」


文官を見る。


「宝よ」


文官は一瞬理解できず首を傾げる。

私は言った。


「温泉」


そして続ける。


「鉱夫達には最高のご褒美よ」


文官はすぐに頷いた。


「確かに」


重労働の後、温かい湯。

疲れは一気に取れる。

私は立ち上がる。


「よし!温泉施設を作る」


作業員達が目を丸くする。


「施設?」


私は頷いた。


「風呂よ!まずは鉱夫用」


文官がメモを取りながら聞く。


「どの程度の規模で?」


私は湯量を見ながら言った。


「……かなり大きく出来るわね」


湯は絶えず湧き出している。

止まりそうな気配もない。

私は少し笑った。


「村の風呂どころじゃない!温泉場よ」


作業員達がざわめく。

私はさらに続ける。


「そのうち宿も作れる。酒場も市場も」


人が集まる場所になる。

私は湯気の向こうの坑道を見た。

この山。鉱石だけじゃない。

温泉まで出てきた。私は腕を組んで呟く。


「……当たり山ね」


遠くでまたツルハシの音が響き始める。


ガン。

ガン。

ガン。


トンネルは掘り続けられる。

そしてこの場所は――

鉱山だけでは終わらない場所になろうとしていた。

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