山を穿つ
うむ。倍増員のお陰で鉱夫さん達がたっぷりと集まった。
私は街道予定地の山を見上げながら腕を組んだ。
「よし」
「体制を変えましょう」
横にいた文官が帳簿を持って近づく。
「どのようにされますか?」
私は指を四本立てた。
「四交代制」
文官が少し驚く。
「四交代……ですか?」
私は頷いた。
「ええ」
「昼も夜も掘る」
今までは昼間だけだったトンネル工事。
今は人手がある。
ならば――二十四時間稼働。
「一日中掘り進むわよ」
文官は少し考え、すぐに頷いた。
「確かにこの人数なら可能ですね」
私は山肌を見上げる。
ツルハシの音が響いていた。
ガン。
ガン。
ガン。
「かなりの速度で掘れるんじゃない?」
街道トンネルが完成すれば、まきちゃんまでの輸送時間はかなり短縮される。
お互いの資材も運びやすくなる。
私は満足そうに頷いた。
「良い流れね」
その横では別の準備も進んでいた。
机の上に並ぶ布と金属枠。
私はそれを手に取る。
「粉塵マスク」
文官が頷く。
「かなり作りました」
トンネルの中は粉塵が多い。
長く吸い続ければ肺を悪くする。
私は肩をすくめた。
「健康第一よ」
作業員は貴重な人材だ。
倒れられては困る。
「全員に配布して」
「了解しました」
文官がメモを取る。
私は村の建設現場へ視線を移した。
家の補修。倉庫の建設。鍛冶場。
私は小さくため息をつく。
「資材不足ね」
文官も苦笑する。
「はい」
領都から資材は届いている。
木材。石材。鉄材。
人が増えた分、消費も増えた。
私は腕を組む。
「まあ仕方ないわね」
拠点建設の初期はこんなものだ。
その時だった。
文官が一枚の報告書を差し出す。
「お嬢様」
「開発部からの報告です」
私は紙を受け取る。
領都から来た開発班。
スキル持ちの技術者達だ。
紙を読み、私は思わず顔を上げた。
「……へえ」
文官が首を傾げる。
「何かありましたか?」
私はトンネル工事現場を指さした。
掘り出された土砂が山のように積まれている。
私は言った。
「この土」
文官が見る。
「ただの土ですが」
私は報告書を見せた。
「レンガの原料に適してるって」
文官の目が少し大きくなる。
「レンガですか」
私は頷く。
「そう」
トンネル工事をすれば必ず大量の土砂が出る。
今まではただ積み上げていただけ。
それを焼けば――
建築用レンガになる。
私は腕を組む。
「レンガをここで作る」
文官はすぐ理解した。
「資材不足の改善になりますね」
私は笑った。
「そういう事」
輸送がいらないしここで生産。
そのまま建築に使える。
私は少し苦笑した。
「流石スキル持ち」
正直、私はそこまで調べていなかった。
開発班は違う。周囲の資源まできちんと見ている。
私は小さく呟いた。
「なかなか優秀ね」
遠くではツルハシの音が響いている。
ガン。
ガン。
ガン。
山を穿つ音。
このトンネルが完成すれば――
この村の運命も変わる。
私は腕を組んで笑った。
「さてどこまで早く掘れるかしらね」




