目覚める村
鉱山の開発が動き出してから、数日が経った。
そしてその頃から、少しずつ人が集まり始めていた。
「お嬢様、到着しました」
文官が報告に来る。
私は村の入口へ視線を向けるとそこには数人の男女。荷物を抱えた人々。
「経済奴隷の方々です」
私は頷いた。
「予定通りね」
彼らは恐る恐る村の様子を見ている。
無理もない。
この村は――かなり寂れている様に見える。
私は苦笑した。
「空き家だらけのゴースト村よね」
村の家は半分以上が使われていない。
扉が外れた家に窓が割れた家。
屋根が抜けかけている家。
昼間ならまだいい。
夜になると――
「かなり不気味よね……」
私は思わず呟いた。
静まり返った家並みに風で揺れる扉。
遠くの鉱山から聞こえる音。
もしここに動画があったら――
私は少し笑った。
「いい撮影スポットになるのに」
ホラー系の。
まあこの世界に動画なんてないけど。
私は手を叩いた。
「さて」
集まった人達を見る。
「まず仕事」
彼らは一斉に背筋を伸ばした。
私は村を指さす。
「空き家の補修」
皆が周囲を見る。
崩れかけた家に壊れた屋根。
私は言った。
「まずは住む場所を作らないとね」
村を拠点にする。
それが第一歩だ。大工経験のある者。
農民。放牧民。
それぞれの経験を見ながら、私は配置を決める。
「あなた達はこの家」
「こっちは屋根」
「そこは床の修理」
文官が横でメモを取りながら補助する。
作業はすぐに始まった。
トントン。
ギシギシ。
木を叩く音。
久しぶりに村に響く生活の音。
私は腕を組んで、その様子を見た。
「これで少しずつ村が動き出すわね」
村は人がいて初めて村になる。
空き家ばかりではただの廃墟だ。
だが今は違う。少しずつ、人の声が戻り始めている。
その頃。村の外では別の動きも始まっていた。
「お嬢様」
別の文官が走ってくる。
「資材が届きました」
私は振り向く。
「どれくらい?」
「木材、鉄材、石材」
「予定通りです」
私は頷いた。
「いいわね」
鉱山の補強と家の修理。
倉庫に設備。資材は必須だ。
村の入口には荷車が並んでいた。
木材と石材。鉄の部品。
私はその様子を見ながら言った。
「備蓄も進めないと」
文官が頷く。
「食料ですね」
「そう」
人が増えれば消費も増える。
食料に薪。油に塩。主だった生活物資。
私は静かに言った。
「市場への注文も増やして」
文官が少し考えた顔をする。
「買い占めますか?」
私は少し笑った。
「そこまで露骨にはしないわ」
市場は生き物だ。
急に大量購入すれば、値段が跳ね上がる。
それでは逆効果。
私は言った。
「少しずつ市場に負担をかけない範囲で」
文官は頷いた。
「なるほど」
私は続ける。
「でも確実に集める」
備蓄。
それは領地の生命線。
何か起きた時、最後に物を言うのは備蓄だ。
私は軽く笑った。
「資金は今のところ潤沢だし」
金鉱に銀鉱。
それだけでもかなりの資金になる。
私は遠くの鉱山を見ると坑道から煙が上がっている。作業は続いている。
私は小さく呟いた。
「さて」
この村はまだ小さい。
だが鉱山と資源に人。
それらが揃い始めている。
私は腕を組んで笑った。
「どこまで大きくなるかしらね」
かつての鉱山の町。
それを超える町になるかもしれない。
風が村を吹き抜ける。
そしてゴースト村だった場所に――
少しずつ、人の音が戻り始めていた。




