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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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集まる人々

金と銀の精製は順調だった。


坑道から運ばれてくる鉱石。

それを簡易精製装置にかける。


炉の熱。

沈殿する不純物。

そして残る金と銀。


私は小さく頷いた。


「……これなら十分ね」


文官が帳簿を見ながら言う。


「かなりの額になっております」


軍資金は、もう確保出来たと言っていい。

私は腕を組んだ。


「よし」


次の段階へ進む。私は文官を呼んだ。


「文官さん」


「はい」


「領内から経済奴隷を集めて」


文官は少し驚いた顔をする。


私は続けた。


「大工さん、農家さん、畜産関係、鉱夫、料理人」


そして少し笑った。


「とにかく、この場所に必要そうな人を」


文官はすぐに理解した。


「なるほど新しい拠点の整備ですね」


私は頷く。


「そう」


ここはただの村では終わらない。

鉱山。資源。物流。人が集まれば町になる。

町になればさらに人が集まる。

その流れを作る。

文官は深く頭を下げた。


「了解しました。直ちに手配を掛けます」


私は満足そうに頷いた。

資金は出来た。


次は――人手。

人手が集まれば、一気に回り始める。


町。鉱山。産業。全てが動き出す。

その前に私は村長の家へ向かった。


ノックをする。


コンコン。


中から声が返る。


「どうぞ」


扉を開ける。

村長は慌てて立ち上がった。


「お嬢様」


私は軽く手を振る。


「そんなに固くならなくていいですよ」


村長は少し困った顔で笑う。


「いえいえ……何用でしょうか?」


私は椅子に座り、ゆっくり言った。


「ここに人を集めます」


村長の目が少し大きくなる。


「人……ですか」


私は頷いた。


「鉱山を正式に動かします。本格的に」


村長は思わず身を乗り出した。


「ほっ……本当ですか?」


私は笑った。


「ええ、鉱脈はかなりの規模でした。掘れば、ここは大きく変わります」


村長はしばらく言葉を失っていた。

そして静かに言った。


「……昔のように」


私は首を傾げる。

村長は遠くを見るような目をしていた。


「昔はここもかなり人が集まっていたんです」


鉱山の町。職人。鍛冶屋。商人。酒場。


人が行き交う場所だった。

だが戦が終わり、鉄の需要が消えた。


人は去った。町は村になった。

私は静かに言った。


「また戻りますよ。人が産業が町が」


村長は小さく息を吐いた。


「……ですが」


彼は少しだけ心配そうな顔をする。


「人が増えれば問題も増えます」


私は頷く。


「確かに」


人が増えれば争いも増える。


酒。金。土地。いろんなトラブルが起きる。

村長は続ける。


「村の者だけなら何とかまとまります。ですが外から来る人が増えると……」


私は笑った。


「トラブルが起きるかも」


村長は静かに頷いた。


「はい」


私は腕を組む。確かにその通りだ。

私は言った。


「でも人がいなければ」


私は窓の外を指した。

静かな村に数軒の家。放牧地に小さな畑。


「ここは変わらない」


村長はしばらく黙っていた。

やがて、ゆっくり頷いた。


「……そうですね」


そして小さく笑った。


「昔のようにまた人が来るなら」


彼は立ち上がる。


「村としても協力します」


私は満足そうに頷いた。


「ありがとうございます」


村長は静かに言った。


「この村はずっと眠っていました」


そして私を見る。


「ようやく目が覚めるのかもしれません」


外では、鉱山からツルハシの音が響いていた。


ガン。


ガン。


ガン。


この小さな村は――もうすぐ、大きく変わる。

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