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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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対価の理屈

鉱山の開発は、想像以上に順調だった。


坑道の奥から運ばれてくる鉱石。

それを私が設計した簡易精製装置に投入する。


炉が赤く燃える。

不純物を分離し、沈殿させる。


そして残るのは――金と銀。


私は小さく頷いた。


「……これは凄いわね」


文官が横で帳簿を見ながら言う。


「含有率がかなり高いようです」


私も同じ結論だった。


「ええ」


普通の鉱山なら、ここまでの純度はなかなか出ない。だがこの鉱脈は違う。


かなり濃い。精製された金塊を見ながら、私は静かに言った。


「これなら」


「軍資金には困らなくなるのも遠くないわね」


石炭。鉄。金。銀。


資源が揃い始めている。

つまり――自立できる。


私は鉱山の入口に出た。


風が吹いている。そして、ふと考える。


「……まきちゃん」


あちら側。曖昧国境の向こう。

彼女の領地は何もない草原。


村もない。拠点もない。


私は腕を組んだ。


「あれは……」


かなり苦労する。こちらは違う。

小さいとはいえ、村がある。


井戸がある。家がある。人がいる。


それだけでも拠点になる。


つまり――私は有利だ。


私は少し笑った。


「それじゃあフェアじゃないわよね」


同盟。協力。そう決めたのだから。

私は振り向いた。


「文官さん!」


「はい」


文官がすぐに近づく。

私は言った。


「計算をお願い」


文官はペンを構える。


「何の計算でしょう」


私は簡単に条件を出した。


「片道二十キロ」


「往復四十キロ」


「文一通の輸送コスト」


文官は少し驚いた顔をしたが、すぐに書き始めた。


「一日一回出す想定で計算して」


「はい」


私はさらに続ける。


「次はそのコストを元に」


「往復千キロ」


文官が顔を上げる。


「千キロですか?」


私は頷いた。


「ええ、週一回、それを三年間」


文官は一瞬固まった。


「……三年」


私は軽く笑う。


「同盟は短くないでしょ?」


文官は深く頷いた。


「承知しました。直ちに計算します」


彼は帳簿を広げ、計算を始めた。

馬の維持費。人件費。食料。

宿泊。消耗品。


全てを積み上げる。


私はその様子を見ながら、ポケットから小さな部品を取り出した。


無線機の部品。


まきちゃんが送ってくれたもの。

私は小さく呟く。


「……便利すぎるのよね」


無線機。通信。距離を無視する技術。


本来なら。手紙。早馬。何日もかかる。


それが――数秒。


私は苦笑した。


「これ、タダで貰うのはダメでしょ」


まきちゃんの性格はよく知っている。


理屈。理論。合理性。


それを崩さない。


つまり――


「ちゃんと対価を出さないと」


絶対に受け取らない。

しばらくして、文官が顔を上げた。


「お嬢様」


「出ました」


私は振り向く。


「聞かせて」


文官は帳簿を見ながら言った。


「片道二十キロ」


「往復四十キロ」


「一日一回の文の輸送」


「三年間」


「総額――」


彼は金額を告げた。


私は少し笑った。


「なるほど」


そして続ける。


「じゃあ次」


文官がまたペンを持つ。


「往復千キロで週一回、三年間」


文官の眉が少し動く。

だが何も言わず計算する。

時間がかかる。


やがて。


「……出ました」


私は帳簿を見る。かなりの金額だ。

私は頷いた。


「よし」


そして言う。


「これを分割で準備して。ここで採れた金銀で渡すわ」


文官が少し驚く。


「この金額分をですか?」


私は笑った。


「ええ。まきちゃんに払う」


文官が首を傾げる。


「何の費用でしょう?」


私は軽く言った。


「無線機の代金」


そして続ける。


「通信費」


文官はしばらく沈黙した。

やがて小さく頷く。


「……なるほど」


私は笑った。


「理論的でしょ?」


そして空を見上げる。

草原の向こう。まきちゃんの領地。


私は小さく呟いた。


「これなら文句言わないでしょ」

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