静かな同盟
濃い会談は、やがて終わりを迎えた。
馬車の中での話し合いは、想像以上に長く続いた。
石炭。鉄鉱石。銃。
そして旧南国の血。
様々な話が交わされたが、最終的に決まった事は一つだった。
レオンハルト・アルフェルト伯。
フリードリヒ・ヴァイスベルク伯。
二人の領主は、娘達の選択を支持した。
もちろん表立ってではない。
あくまで――影から支える。
資源開発。技術開発。
それらを、二つの領地で進める事になる。
そして翌朝。
両伯爵の馬車隊は、それぞれの領都へ向けて出発した。
草原の上。
隊列はゆっくりと遠ざかっていく。
それを見送る文官達は、ほっと息を吐いていた。
「……終わりましたな」
「寿命が縮まりました」
両国の領主が同じ場所にいる。
しかも国境の上。
何も起きなかった事自体が奇跡だった。
ようやく緊張の糸が解けた。
私はその様子を見ながら笑う。
「文官さん達大変ね」
私も苦笑する。
「ほんとよ」
そして私達は互いを見る。
しばし沈黙。そして私が言った。
「さて」
まきちゃんは頷く。
「やる事山ほどあるわね」
石炭。鉄。銃。無線。
そして領地改革。
やる事はいくらでもある。
まきちゃんは草原を見渡した。
この場所。曖昧国境。
だがここから、何かが始まる。
私が手を振る。
「じゃあ、またね」
「無線で」
まきちゃんは笑った。
「了解」
暫しの別れだがもう距離は感じない。
二十キロ。それだけだ。
私達はそれぞれの隊列へ戻っていった。
草原には静かな風が吹いていた。
この場所で決まった事は――
きっと世界を、少しずつ変えていく。




