眠っていた鉱脈
翌日の朝。
私は数名の護衛と文官を連れて、村の裏手にある鉱山へ向かっていた。
丘の中腹にぽっかりと開いた坑道の入口。
昔はかなりの人が出入りしていたのだろうが、今は静かだ。
入口には簡単な支柱が組まれている。
私はそれを見上げて眉をひそめた。
「……古いわね」
中へ入るとひんやりとした
空気に土と鉄の匂い。
坑道はそこそこ広いが、壁や支柱はかなり年季が入っている。
私は周囲を見回した。
「うーん……」
素人目でも分かる程に古びている。
すぐ崩れるようには見えない。
長くは持たない。
私は小さく呟いた。
「解析」
スキルが反応する。
視界の端に情報が浮かぶ。
支柱の状態。地盤の強度。
坑道の寿命。
そして結果。
「……耐久性、あと四〜五年」
私は腕を組んだ。
「補強しないと危ないわね」
文官が驚いた顔をする。
「そんなにですか?」
私は頷いた。
「まあ、見た目通りね」
長年使われた坑道。補修も最低限。
崩落していないのが不思議なくらいだ。
私はさらに奥へ進む。
「こっちが現在の採掘場所?」
文官が頷いた。
「恐らく」
壁には鉄鉱石の黒い筋が見える。
私は手を当てる。
「解析」
結果が浮かぶ。私は思わず口元を緩めた。
「……かなりあるわね」
埋蔵量はまだ豊富。
問題は採掘速度。
人手不足。設備不足。
それだけ。私はさらに奥の通路を指した。
「こっちは?」
文官が答える。
「そこは昔の坑道の様で、それにかなり古いです。鉄鉱石はほとんど採れなくなったので、今は使っていないですね」
私は頷いた。
なるほど。枯れた通路。だから放置。
「念のため確認するわ」
崩落していたら危険だ。
使っていなくても、坑道は繋がっている。
私は慎重に進む。
護衛たちも後ろから付いてくる。
「解析」
「解析」
スキルを使いながら進む。
地盤。支柱。空洞。危険箇所。
確認しながら歩く。
そして数十歩進んだ時だった。
……ん?
私は足を止めた。何か反応がある。
鉄鉱石とは違う。
私はもう一度スキルを使う。
「解析」
結果が浮かび私は思わず声を漏らした。
「……ぶっ!」
護衛が驚く。
「お嬢様?」
私は壁を見つめたまま呟いた。
「はぁ?」
信じられない。
私は壁に手を当てた。
「解析」
もう一度、だけど結果は同じ。
「……金鉱脈」
さらに。
「銀鉱脈」
そして。
その他希少金属。私は思わず笑った。
「嘘でしょ……」
しかも量が多い!かなり多い。
これは――
「一攫千金じゃない!」
私は思わず叫びそうになるのを抑えた。
頭の中に浮かぶ言葉。
金。銀。希少金属。
つまり金持ち!つまりだらだら生活!
私はすぐに振り向いた。
「文官さん!」
「はい?」
私は周囲を確認して、文官の耳元へ近づく。
コソコソっと。
「この先に金と銀の鉱脈!しかもかなりの量」
文官の目が見開かれた。
「ぶっ!!」
彼は慌てて口を押さえた。
「ど、どうしましょう……」
私は腕を組んだ。
「いや……」
急に言われても困るよね。
私も困ってる。これは重大案件だ。
「お父様に早馬」
文官が頷く。
「判断を仰いで」
「掘るなら」
私は坑道の奥を見た。
「私がここで指揮を取る」
文官は姿勢を正した。
「承知しました!直ちに!」
彼は急いで坑道を出ていった。
私は壁を見つめる。
金。銀。希少金属。しかも鉄鉱山の奥。
誰も気付いていない。私はニヤリと笑った。
「くくく……」
これは。これは。
「金や!」
私は小さく拳を握った。
「金持ちや!」




