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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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解析とエンジニア

教会からの帰り道。私は早速、馬車の中でスキルの検証を始めていた。


神殿でのざわつきは、まだ耳に残っている。


「解析」と「エンジニア」。


二つ持ち。

しかも聞いたことがないスキル名。

……最高じゃない?

私はこっそり、馬車の内装に手を触れた。


心の中で、念じる。


解析。


瞬間、視界の端に半透明の文字列が浮かび上がった。


――中世型四輪馬車(高級仕様)

主材料:オーク材(車体)/鉄(車軸・補強金具)/牛革(座席)

製造年数:約12年

耐久度:中

構造欠陥:懸架装置なし

推奨改良:板バネ式懸架装置の導入


おおお……!


出た!本当に出た。

しかもめちゃくちゃ具体的。


オーク材。

硬くて耐久性の高い木材だ。建築や船にも使われるやつだな。


鉄製の車軸に、補強金具。

牛革のクッション。

確かに高級馬車っぽい。


……いや、待て。製造年数、十二年?

結構使ってない?

耐久度「中」って微妙じゃない?


そして何より――構造欠陥:懸架装置なし。


だよね!?


さっきからお尻が痛いの、そのせいよね!?

さらに目を引いたのが


推奨改良:板バネ式懸架装置の導入。


板バネ。いわゆるリーフスプリング。

複数の鉄板を重ね、しならせることで衝撃を吸収する構造だ。


前世ではトラックや古い車両にも使われていたシンプルかつ頑丈なサスペンション方式。


つまり今のこの馬車は、車輪→車軸→車体が直結。

衝撃がそのまま乗員の尻に直撃する仕様。


そりゃ揺れるわ。

だが、板バネを間に挟めば、衝撃を鉄板の弾性で吸収出来る。

馬の負担も減るし、乗り心地も改善される。

……これ、普通に売れるんじゃない?


しかも驚いたことに、視界の情報は、手元の紙へと“転写”出来た。


念じるだけで、文字が紙面に浮かび上がる。

高性能すぎない?

これはもはや、設計支援AIでは?


「エンジニア」のスキルも試してみる。


改良案、具体化。


すると、馬車の側面に、半透明の設計図のようなものが重なって見えた。

どこに板バネを設置し、どの程度の厚みの鉄板を使うべきか。


推定必要素材量まで表示される。

……便利すぎる。


しかもこれは、前世の知識と噛み合っている。

完全に未知の技術なら困ったが、私は一応、ミリオタである。


兵站、輸送、構造物。

基礎的な仕組みくらいは分かる。


解析で現状把握。エンジニアで改良設計。


これ、内政向きじゃない?


農具、倉庫、城壁、橋、武器、防具。

全部“見える化”出来る。


欠陥も分かる。改善案も出る。


……あれ?これ、私。

この世界で無双出来るのでは?


いや、無双というか。


安定?


安定して、ほどほどに改革して、ほどほどに評価されて、あとはのんびり暮らせるのでは?


脱・ブラック企業。


毎日終電。理不尽な上司。

意味のない会議。

あんな生活、二度と御免だ。


この世界では、適度に働いて、適度に成果を出してあとは優雅に紅茶でも飲んで暮らす。


そう。のんびりダラダラ生活。


伯爵家の跡取りという立場?

大丈夫!大丈夫!


このスキルがあれば、問題は事前に潰せる。


戦争?来たら来たで、兵站を整えればいい。

魔物?防壁を改良すればいい。

財政?効率化すればいい。

完璧じゃない?


……と。


その時は、本気で思っていた。


この世界は、私にとって“楽な二周目”になるのだと。

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