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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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静かな鉱山の村

私たちは出発してから、およそ一ヶ月ほどで目的の村へ到着していた。


国境近くの小さな村。


例の――鉄鉱石が採れる場所だ。

馬車がゆっくりと村へ入る。

私は窓から外を眺めた。


「……思ったより小さいわね」


家はまばら。木造の家屋。

小さな畑。そして遠くの小高い山。

いかにも田舎の村といった雰囲気だ。

私は馬車から降り、周囲を見回した。


「鉄鉱石の村って聞いていたけど……」


どう見ても鉱山の村には見えない。

村の周囲には放牧地。

牛や羊がのんびりと草を食べてる。

さらに畑。

小麦が風に揺れている。


主な産業は――


「放牧と小麦?」


私は首を傾げた。鉄の村のはずなのに?


すると文官が静かに言った。


「それも仕方ありません」


私は振り向く。


「どういう事?」


文官は村の奥の丘を指した。


「あの丘の向こうに、旧鉱山があります」


「旧?」


私は眉を上げた。

文官は頷いた。


「数十年前までは、この村はもっと大きな町でした」


私は少し驚いた。

今の姿からは想像できない。


文官は続ける。


「当時は戦争がありました」


「ああ……」


なるほど。戦争。

つまり武具需要。


剣。槍。鎧。矢じり。


鉄は大量に必要になる。


「その頃は、この鉱山もかなりの規模で採掘されていたそうです」


それで町まで発展したのか。

私はゆっくり頷く。

だが文官の声は少し重くなった。


「しかし戦が終わり……」


「鉄の需要が激減しました」


私は静かに息を吐いた。

武器需要が消えれば当然だ。

問題はそれだけではない。


文官は続けた。


「さらにこの地域は旧南部」


私は目を細める。

東西が南を分割した話。

つまりこの地域は――征服地。


「鉄は中部や北部からの輸入が優先されたそうです」


「……強制的に?」


「はい」


なるほど。政治。経済。戦争の後処理。

敗者側の産業は抑えられる。


よくある話だ。


「その結果」


文官は村を見渡す。


「この町は村へと縮小しました」


私はゆっくりと周囲を見回した。


家の数。人口。畑。放牧。

確かに町ではない。


村だ。


残った住民は、生きるために選択した。


放牧。農業。食料生産。

鉄に頼らない生活。


「変革を迫られたってわけね」


私は小さく呟いた。

文官は頷く。


「現在も細々と鉄は採掘されています」


「ただ規模は小さいです」


私は丘の方向を見る。

そこに旧鉱山がある。


そして今、状況は少し変わっている。


「……私が鉄を使い始めた」


電灯。機械。水車。洗濯機。扇風機。


文明の基盤は金属だ。


そして今度は――需要が戻った。


だが文官は少し困った顔をした。


「問題があります」


私は苦笑する。


「生産が追いついてない?」


「はい」


採掘は小規模。人員も少ない。

設備も古い。需要増加に対応できない。


さらにもう一つ問題がある。


文官は声を落とした。


「急に鉄を大量輸入すると……」


私はすぐ理解した。


「武具生産?」


「はい」


戦争準備を疑われる。


この世界では、鉄=武器。その認識が強い。


つまり簡単に輸入もできない。

政治的な問題。私は丘を見つめた。


旧鉱山。静かな村。


そして今、ここにはチャンスがある。

私は小さく笑った。


「なるほどね」


眠っていた資源。忘れられていた産業。

そして。今はもう、戦争のためではない。

私は丘の方へ歩き出した。


「まずは見せてもらいましょうか」


この村の――本当の価値を。

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