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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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街道の先へ

ポカポカとした陽気。

春の柔らかい日差しが、馬車の窓から差し込んでくる。


ガタン、ゴトン――規則的な揺れ。


だがその揺れは、以前の馬車とは比べ物にならないほど穏やかだった。

私は簡易ベッドに体を預けながら、目を細める。


「……眠くなるわね」


適度な揺れ。暖かい空気。

これは完全に、眠気を誘う条件が揃っている。


私は小さく笑った。


「本当に違うわね」


以前、教会へ行く時に乗った馬車。

あれは正直、拷問に近かった。

お尻は痛いし、体は揺れるし。

長距離移動には向いていない。


この専用馬車は違うし、改良した足回り。


板バネ。強化した車軸。

衝撃をしっかり吸収している。


「これは大成功ね」


私は満足して頷いた。

しばらくすると、馬車がゆっくりと止まる。

御者の声が聞こえる。


「お嬢様、村に到着しました」


私は体を起こした。


「はーい」


外へ出ると小さな村。


畑。井戸。木造の家々。


どこにでもあるような、素朴な景色。

私はゆっくりと村を見て回る。


水路に倉庫と農具。道の状態。


私は気付いた点を口にする。


「ここの水路、少し浅いわね」


「大雨の時、溢れる可能性がある」


文官がすぐに帳面へ書き込む。


「……はい」


「あと倉庫。通気が弱い。穀物が傷むわ。改善案を書いておいて」


「承知しました」


最近、この流れがすっかり定着してきた。


私は指摘。文官が記録。書面を作る。

領主館へ送る。

そこから工事や改善が進む。


そして最近、変化がある。


文官が自分から言った。


「お嬢様、この井戸ですが」


私は振り向く。


「なぁに?」


「周囲の地面が沈んでいます。雨の時に泥が入る可能性が」


私は少し笑った。


「いい所に気付いたわね」


文官は少し照れたように頭を下げた。


「ありがとうございます」


私は周囲を見渡す。

以前なら、言われた事を記録するだけだった。


だが今は違う。文官たち自身が問題を見つけるようになっている。


改善点見つけ効率。忘れてはならない安全。


考えるようになってきた。


「皆んな見る目が変わって来たわね」


私は小さく呟いた。

書類だけ見ていても、分からない部分は多い。


現地の空気感。地面に動線。


実際に来ないと見えないものがある。

視察の価値は、そこにある。

私は地図を確認した。


「さて」


次の村へ距離はそれほど遠くない。

私は馬車に戻る。

御者に言う。


「次へ行きましょう」


馬車が再び動き出し街道を進む。私は窓から外を眺めた。

この辺りまでは、道もかなり整備されている。


轍も浅い。水はけも良い。

馬車の揺れも少ない。


「問題は無さそうね」


その景色は、どこまでも穏やかだ。


畑。草原。遠くの森。風に揺れる麦。

村と村の間には、広い自然が広がっている。

私はぼんやりとその風景を眺めた。


「……のんびりしてるわね」


当たり前だけど争いも無く。

騒ぎも無い。静かな景色。


この世界の多くは、こういう場所なのだろう。


私は小さく息を吐いた。


「自然の中って感じ」


馬車はゆっくりと街道を進む。

そしてその先には――

まだ見ぬ村と、まだ知らない景色が待っていた。

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