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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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次の基盤

夜の三の刻の通信が終わり、研究室には静けさが戻っていた。


無線機のスイッチを切ると、先ほどまで聞こえていた微かなノイズも消える。

残るのは水車の回転音と、机の上の設計図だけ。


私は椅子にもたれながら、小さく息を吐いた。


「まきちゃんと、殆ど同じ考えか……」


やっぱそうなるよね。

お互い元エンジニア。

現状を見れば、進む方向は自然と似てくる。


まずは内政。これが安定しないと何も始まらない。


農業の安定に、物流の整備に、生活改善。

ここまでは、かなり進んできている。


電灯。水道。洗濯施設。

測量による地図製作。


領地の仕組みは、確実に変わり始めていた。

そして最近、数字にも結果が見え始めている。


市場の取引量。税収。人口の流入。


ゆっくりだが、確実に上向き。


「悪くないわね」


私は机の上の帳簿を閉じた。

内政は軌道に乗り始めている。


となると、次の柱。


新製品開発。


まきちゃんとの話し合いで、ある程度の棲み分けは決めてある。


被らない分野。互いの領地の特色。

物資交換。これで無駄な競争は避けられる。


私はペンを取り、紙にいくつかの単語を書いた。


金属。機械。化学。布。……いや。

ここで重要なのは基盤。

生活も産業も支えるもの。

私はペン先を止める。


「建築資材、か」


悪くない。

この世界の建築は、基本的に木材が中心だ。


一部の都市部では石造りもあるが、量産には向いていない。


そして何より――火事。


木の街は燃える。

一度火が出れば止まらない。


私は紙に書く。


耐火煉瓦。コンクリート。

この二つは生活にも使える。


倉庫。工場。橋。井戸。建物。


そして――軍用にも転用可能。


城壁。防御施設。砲座。

まあ、そこは今は置いておく。


私は椅子から立ち上がり、窓の外を見た。


夜の領主館。灯りが揺れている。

もしこの街が煉瓦造りになれば。


火事は激減するし倉庫も安全。

工場も増やせる。

つまり産業基盤が強くなる。


「うん」


悪くない。しかもこの二つはそこまで手は掛からない。


材料はある。土。砂。石灰。焼成。混合。

スキル補正を使えば、初期試作はすぐ出来る。


お手軽と言えばお手軽。だが問題が一つ。


「利益が低いのよね……」


私は苦笑した。


建材は儲からない。大量に売って、やっと利益が出る。


つまり――基盤産業。


これはこれで重要だが、領地を一気に豊かにする物ではない。

私は机に戻り、紙をもう一枚出した。


「それ以外にも考えないと」


高利益商品。輸出向け。独占性。

技術優位。この辺も必要。


まきちゃんの懐中電灯。


あれは上手い。魔石需要も刺激する。

ブランドも作れる。

私は腕を組んだ。私は洗濯機を作った。家電…‥扇風機、先ずは大型冷蔵庫に冷凍庫か。


「まあ、急ぐ事でもないか」


今は基盤。建材。道路。物流。農業。

これが揃えば、産業は自然に育つ。


私は耐火煉瓦とコンクリートの文字を丸で囲んだ。


「まずはここから」


明日、職人を呼び窯を作る。

試作を始める。もし上手く行けば。

この領地の街並みは、少しずつ変わる。


私は小さく笑った。


だらだら生活は、やっぱり遠い。

やることは山ほどある。


そしてそのほとんどは――未来につながっている。

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