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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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境界を測る

あれから毎日。

私とまきちゃんは、夜の三の刻に通信を続けている。


最初は近況報告だった。


互いの領地の様子。

収穫。

市場の動き。

職人の確保。

魔石の流通。


次に技術の話。


石鹸の改良。

発電装置の安定化。

蓄電装置の容量。

工具の精度。


気がつけば、話題はどんどん専門的になっていった。


やっぱり同じエンジニア。

話が早い。そしてある夜、まきちゃんが言った。


「ゆきちゃん、地図ある?」


「あるけど……」


私は領主館の書庫から持ってきた地図を思い出す。


羊皮紙。古い。線は曖昧。川も歪んでいる。

距離感も怪しい。


つまり――使えない。


まきちゃんは笑った。


「やっぱりね」


「この世界の地図、精度低いでしょ?」


「かなりね」


そこで出た話が――三角測量。


距離と角度。基準点を決める。

そこから広げていく。

古典的だが、確実な方法。


「なるほど……」


私は頷いた。


「それなら出来る」


問題は精度と道具。そして――人手。

私は通信を終えた後、すぐにスキルを使った。


解析。設計。角度測定器。

測量用ポール。距離測定用の基準具。

補助器具。

全てこの世界の素材で再現可能な形に調整。


図面を起こし鍛冶屋へ依頼。

木工職人へ依頼。


数日後に測量道具が完成した。

私は机の上に並べながら呟く。


「さて……」


問題はここから三角測量は人手が掛かる。

かなり掛かる。


山。丘。川。基準点。測定。記録。計算。

一人では無理。


つまり――人海戦術。

私は通信でまきちゃんに言った。


「出来れば、あなたの領地まで優先」


「つまり国境ね」


まきちゃんはすぐ理解した。


「なるほど」


「国境が正確に分かれば、その後の地図も楽になる」


そう。まずは外枠。その後に内側の領内の道路。


村。川。資源。正確な地図があれば。


物流。防衛。開発。


全てが変わる。


私は次の日、お父様の執務室へ向かった。


「地図を作ります」


お父様は眉を上げた。


「地図?」


私は説明する。


測量。距離。三角測量。基準点。

正確な領地図。


そして――国境。


お父様は腕を組んだ。


しばらく考え。


「面白い」


そう言ったが問題は同じ。

人手。私は少し躊躇った。


そして言う。


「……経済奴隷を追加で」


本当は使いたくないが今は人が必要。測量は数で押すしかない。

お父様は静かに頷いた。


「分かった」


「見合う者を連れてこよう」


了承は取れた。

私は廊下を歩きながら小さく息を吐いた。

これで動けるが待つ必要はない。


私は研究室へ戻る。


今いる人材。職人。文官。

洗濯施設の管理人。

そして奴隷たち。


「測量隊を作るわ」


皆が顔を上げる。

私は道具を机に並べた。


「やることは単純」


「距離を測る」


「角度を測る」


「記録する」


それだけその積み重ねが――


世界を変える。私は窓の外を見る。


遠くの丘。あの向こうに、まきちゃんの領地がある。


まずはそこまで国境。

その線を私達は自分達の手で引く。


「さあ、始めるわよ」


世界を測る仕事を。

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