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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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届いた箱

奴隷たちとの面接を開始した。

まずは相手を見ないとね〜。


年齢。体格。読み書きの可否。

前職。借金理由。技術経験。


目を見ると怯えか。諦めか?怒りか?

それぞれ違う。私は一人ずつ話を聞いた。


「木工経験あり」


「鍛冶見習い」


「帳簿が少し」


「畑しかした事がない」


なるほど。適材適所。

単純労働だけに回さない。


技術部門補助。工場ライン。

市場管理。水車保守見習い。

帳簿補助。


テキパキと配置を決め回してみる。問題が出たら直す。


これでいい。


どうせ最初から完璧にはならない。

配置が決まり、工場が回り始めた頃。


文官が足早に近づいてきた。


「お嬢様」


「どうしたの?」


「隣の国から荷物が届いております」


「? いつも通り倉庫へ」


「いえ……そうではありません」


文官は一瞬言い淀む。


「どうやら、直接お嬢様へと」


……。


私はゆっくりと立ち上がった。


「見に行きますか」


中庭に馬車二台分。

木箱の山。いや、何じゃこの量は。

本気か。


封蝋はフジ印。


間違いない。私は手紙を開く。

そこには見慣れた、癖のある日本語。


親愛なるゆきちゃんへ

まさか貴女もこの世界で転生を受けているとは、驚きと驚愕してます。

さくら印、フジ印。考え方は同じ様で安心したわ。


な!?


「まきちゃん……!?」


同期。電車。事故。

あの日、一緒にいた。


まさか。私だけじゃなかった?

頭が追いつかない。


続きを読む。


お仲間がいる事を安心してます。

距離が不明だけど、通信装置を試作したわ。部品一式、予備部品、工具、蓄電装置。

今の貴女の立場が分からないので、必要そうな物は全て送ったわ。

貴女なら組み上げられる筈。

連絡、気長に待ってるわ。


私は手紙を持つ手が震えるのを感じた。


箱を開ける。中には精密な部品群。

整然と分けられた金属部材。

巻かれた線材。小型の蓄電器。

組み立て図らしき紙。


……本気だ。


まきちゃん、本気で通信を作ったの?

しかも異世界素材で?私は深く息を吐いた。嬉しい。正直、嬉しい。仲間がいる。


技術屋。同じ時代の感覚。


同時にこれ、完全に軍事転用可能。

通信は、戦略そのもの。

私の立場は旧南の血筋。

隣国は敵国側。


もし露見すれば外交問題どころではない。

私は箱を見下ろす。工具まで揃っている。

本当に“私なら出来る”前提で送ってきている。


まきちゃんらしい。


時に大胆。一直線。そして信頼。

私は静かに言った。


「この荷は、研究室へ内容は、私以外触れるな」


文官は驚いたが、何も聞かなかった。

私は歩きながら思う。これを組み上げれば、距離は消える。


即時通信。相談。情報共有。


もしかすると――戦争すら防げるかも。


逆に火種にもなり得る。

私は研究室の扉を閉めた。


木箱を見つめる。

だらだら生活は、もう完全に消えた。


文明。経済。奴隷制度。隣国。

転生者二人。物語は加速している。

私は小さく笑った。


「気長に待ってる、ね」


待たせるつもりはない。


まずは状況整理。


立場。国境。父の意向。南の歴史。

全てを踏まえてからだ。お互い何処まで理解してるか。


私は箱に手を置いた。

再会は近い。


その形は――まだ、決めていない。

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