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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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最初の灯り

決めた。まずは――領主館からいきなり街全体は無理だ。ならば実験。


成功例を作る。領主館に電気を通す。

水力発電施設を建築する。

川沿いのあの地点。


流速も安定。落差も十分。


小規模な動力装置を設置し、回転運動を発生させる。それを発電機構へ接続。


魔石を電池として使うのはやめた。


あれは高価になる予定だし、今は市場が揺れている。


代わりに――蓄電池を設計する。


この世界の素材で再現可能な範囲で。

解析とエンジニアを総動員。

理論値。容量。安全性。充放電。

調整。試作。失敗。改良。再試作。


そして――やっと安定稼働。


電力を溜めそこから領主館へ送る。

配線は簡素。まずは主要室のみ。


私は次に、灯りへ着手した。


昔ながらの裸電球。構造は単純。

発光体。封入。通電。試作。点灯。


――パチリ。


小さな光が、部屋に生まれた。

私はしばらく黙って、それを見つめた。

油の匂いがしなし煙も出ない。

揺れない。静かな光。


これだ。


試しに蛍光灯も設計してみた。


……やめた。


ロードマップが、とんでもないことになった。

材料精製。真空技術。特殊ガス。量産装置。

最低でも数年。


今はまだ無理。文明は段階を踏む。

私は電球で満足する。


夜。


領主館の一室が、白く照らされた。

メイドたちがざわつく。


「明るい……」


「油の補充が要らないのですか?」


「火の匂いがしない……」


そう!油の補充は不要。火事の危険性も大幅に減る。


灯火の転倒。油の飛散。消し忘れ。


そのリスクが消える。

さらに私は井戸へ向かった。


手動ポンプそれを改良し電動ポンプを設計し、取り付ける。


試運転。その内に蛇口も作らんと。台所に管も引いてね。


水が、一定量で安定して汲み上げられる。

重労働だった水汲みが、格段に楽になる。

メイドが目を丸くする。


「軽い……!」


私は腕を組み、満足げに頷いた。

これで楽ちんになりますよ。

感謝しなさっての。


もちろん口には出さない。


心の中だけだ。


電気。灯り。ポンプ。

これは単なる便利さではない。


労働時間の短縮。事故の減少。

生産性向上。夜間活動の拡大。

文明の基礎だ。


私は館内を歩きながら考える。


まずはここを成功例。

安全確認。安定稼働。


その後に領内へ広げる。一気には無理なのでゆっくりと。


配線技術。保守要員。発電容量。

段階的拡大。


工業化は急げば崩れる。


私は静かに天井の灯りを見上げた。

フジ印が懐中電灯を売った。


私は、街を照らす。


勝ち負けではないただの方向性の違いだ。

隣国が魔石を蓄えるなら。


私は水を廻す。

この灯りは、守るべきものになる。


私は小さく笑った。

だらだら生活は、また遠のいた。


明るい部屋は、悪くない。

もう一段階上へ進んだ。

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